2024年11月29日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年5月27日

 焦眉の急は自治政府を発足させることである。DUPの党首ドナルドソンは去る2月に、英国政府に圧力をかけて北アイルランド議定書を破棄させるために、自治政府を離脱し自治政府を崩壊させめたが、「決定的な行動」があるまでは自治政府に参加することを拒否する立場を維持している。

波乱は避け得ない雲行き

 ベルファスト合意はユニオニストの最大政党とナショナリストの最大政党が権力を分有する構造を規定している。それが北アイルランドの政治を長期的に安定させる方策だとの当時の判断は正しかったと思われるが、一方の政党がこの構造を拒否権に用い、政治を麻痺させるのであれば、この構造自体の是非が問われることになる。

 今回のAllianceの躍進のように、ユニオニストとナショナリスト以外の第三の勢力が台頭するのであれば、なお更のこと、この構造が問題となろう。

 DUPを懐柔して自治政府に参加させるためか、英国政府は本土から北アイルランドへのモノの流通を規制する部分など議定書の枢要な部分を一方的に破棄する動きを再び示しており、波乱は避け得ない雲行きである。現状は持続可能でなく、北アイルランドを不安定化し、ベルファスト合意を損なうと英国政府は主張しているが、ベルファスト合意を守るための枠組みを一方的に壊そうとし、むしろ不安定化を煽っている印象がある。

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