露の狙いを頓挫させた
欧米の「異例」支援
タイガー・チームの当初の構想は、機密情報を公開することでロシアが発する偽情報に反駁し、かつロシアの侵攻を押しとどめようというものであったが、これは侵攻の意思を固めたプーチン大統領には効かなかったようである。ただし当初、ロシア側が16日に予定していたとみられる侵攻を24日に延期した可能性があることは指摘できる。
そして米国による機密情報の開示は、ウクライナ軍の手を緩めさせないことと、ロシアの偽情報を駆逐するという点においては有効に機能しており、英国もこれに追随した。
2月15日にロシア軍はウクライナ国境付近に展開していた部隊を一部撤収したと発表したが、これに対してバイデン大統領は「撤収を確認できていない」との見方を示し、さらに18日には「プーチン大統領が侵攻を決断したと信じるに足る理由がある」と発言している。これらの発言は、米国の機密情報を情報源が特定されないようにぼかしたものではあったが、異例の対応であったといえる。
その結果、24日のロシア軍の侵攻に対して、ウクライナ軍はそれを何とか押しとどめることに成功している。特にキーウ近郊のアントノフ国際空港においては激烈な戦闘が行われたが、当初ロシア軍は同空港を急襲、占領することにより、そこに兵員や装甲車両を満載した輸送機を着陸させ、電撃的にキーウを陥落させることを狙っていたようである。
その後、同空港は一時的にロシア軍に占拠されるが、電撃戦では頓挫しており、もしウクライナ側が手を緩めていれば、今頃キーウは陥落していたかもしれない。さらに欧米は迅速に結束して対露経済制裁を発表しているが、このような対応は事前に情報が共有されていなければ難しかっただろう。
このように米国による機密情報開示は、ロシア側の偽情報を駆逐するだけでなく、緒戦におけるロシアの狙いを頓挫させたといえる。
もちろん欧米諸国は機密を開示するだけでなく、ウクライナ政府に直接機密情報を提供もしている。それらは主にウクライナの軍事行動を支援するためのものであろう。米国はファイブ・アイズと呼ばれるインテリジェンス同盟国、そして北大西洋条約機構(NATO)や日本など軍事同盟を結ぶ諸国に対しては情報を提供するが、同盟関係にないウクライナを情報の面から支援するというのも異例のことだ。
しかしウクライナ側にとってこれは武器供与に匹敵する価値があるとされる。既に開戦後に8人以上のロシア軍将官が戦死しているが、多くのケースは米国からの情報提供によって狙われたものと考えられる。
また、4月14日にはロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」がウクライナの地対艦ミサイルによって撃沈させられたが、報道によるとこれも米国の情報によるところが大きかったという。
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