2022年10月7日(金)

ニュースから学ぶ人口学

2022年6月27日

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少子化対策に求められること

 昨年の人口動態統計を伝えた6月4日の新聞各紙の記事には、有識者のコメントが寄せられている。産経新聞は、「そもそも急速な未婚化が進んでいたことに加え、コロナ禍で経済面に不安を持つ若い世代が結婚を手控えた」、「今年の出生数が80万人を下回るのは確実だ」(天野馨南子・ニッセイ基礎研究所人口動態シニアリサーチャー)とする声を伝える。

 将来の日本社会はどうなるのか。読売新聞は、「日本の人口構造は縮小ループにはまっている。婚姻数の減少が出生数の減少と連動していて、このままでは、社会の支え合いが成り立たなくなる」(天野馨南子・同前)との見通しを伝える。朝日新聞は、「若い世代の生活には医療、保育、教育のどれもが必要。それがなくなれば、住める地域を求めて移動するだろう。住むのを諦めざるを得ない地域が全国で出てくる時代が来るかもしれない」(山縣文治・関西大学教授)との、地域消滅の懸念を伝える。

 少子化が一段と深刻な水準に至った背景には対策の欠如、あるいは不足がある。ではどのようにしたら良いのか。毎日新聞は、「政府の対策がなければもっと出生率は下がっていたかもしれない」とした上で、「ただ、スウェーデンやフランスに比べ若年層にかける予算は半分ほどで出生率を上昇させるほどの力はなかった」とし、「若い人たちの所得が安定し、将来に対する希望が持てるようにならないと、子供は増えないだろう」とのコメント(加藤久和・明治大学教授)を伝えている。

 若者世代への支援の重要性については、多くの専門家が指摘する。毎日新聞は「経済的問題から結婚や子供を持つことをあきらめている人たちがいる」(星野卓也・第一生命研究所主任エコノミスト)とする事実を伝え、日本経済新聞は「若い世代の雇用対策と経済支援が必要」、「正規雇用でも賃金が不十分な人が多い。若い世代のキャリア形成支援が結婚、出産に結びつく」(松田茂樹・中京大学教授)と伝える。

 朝日新聞においても松田氏は、日本では保育施設の整備などが進んだ一方、現金給付が不足していると指摘し、「教育費をはじめ経済負担を懸念し、希望する子どもの数を持てない場合が多い。児童手当など現金給付の予算を拡充するべきだ」とした上で、「これまでのデータを分析すると、『目玉政策』のような一つの施策で出生数は回復しない。結婚に至るまでの出会いの支援も含め、様々な政策を講じて行かなければいけない」と述べている。

 こうしたコメントに共通するのは、出産・育児・保育・教育への現金給付、現物給付は不可欠ではあるが、根本的には読売新聞が伝えるように、「若い人の雇用環境を整備し、賃金を上昇させることが、結婚や出産につながり、少子化を防ぐことになる」(坂元晴香・東京大学特任研究員)のではないだろうか。

 先に紹介した各党の公約には、経済政策や社会保障の分野で「人への投資」、最低賃金の引き上げ、低所得層の子育て支援などはあるが、若者の自立を支援するこれといった具体的な施策は見られない。肝腎要の対策が欠如しているのだ。

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