男性は「草食化」したのか?
少子化をめぐって話題になったのが『令和4年版 男女共同参画白書』の記述である。白書の中で、高度経済成長の時代までは過半数が見合いによる結婚であったものが、今は完全に逆転して、88%が恋愛結婚になっている。
これに関連して「令和和3年度 人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査」の結果から、「これまでの恋人の数・デートした人数」を掲載している(特-38図)。それによると、20代の独身男性では4割が恋人ゼロ、デートした人数もゼロと回答しているという。若者が配偶者となる相手を見つけにくい時代になったという。
テレビのワイドショーでは、男子の草食化としてこのことだけが切り取られ、大きく報道された。しかしこの解釈は正しくないとの批判もある。
別の調査によると、男性の年齢別デート経験率はもっと高く、18歳くらいで6割を超えている。また1963~68年生まれも、81~86年生まれも、そして93~99年生まれも、大きな変化がないというのだ(荒川和久「『デート経験なし4割』で大騒ぎするが、40年前も20年前も若者男子のデート率は変わらない」)
男女共同参画社会白書に関連して内閣府に設置された「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会(第11回)」ではとんでもない報告が行われていた(2022年4月7日)。「恋愛格差社会」における「恋愛弱者」を支援する必要があり、そのためにはアドバイザーを養成し、見た目の改善や自信をつけるためにセミナーを開催することが提案されている。そこで具体的な教育の例として挙げられたのが、「壁ドン・告白・プロポーズの練習・恋愛ゼミ」なのだ。
あくまで公開された報告資料だけによる理解なので正確ではないかもしれないが、問題が2つはありそうだ。第1は恋愛成就のために、見た目の良さの重視、壁ドンなど、時代錯誤な方法が真面目に取り上げられていることは、まさに男性主導でなければならないかのようなジェンダー観に基づいているのではないかということ。第2は自信を持てずに恋愛や結婚に踏み込めない若者が少なくないことは事実だが、本質的な問題として、不安定な非正規雇用の増加、十分ではない給与水準、キャリア教育の不足がある。