中国が仕掛けてきている「法律戦」の新説
ごく最近、中国外交部の王報道官は、台湾海峡について「台湾海峡は中国の主権下にある『内水』のようなものである」と述べ、国際海峡のように、他の国々が勝手に「無害通航」することは出来ない、と指摘したが、これは今までに中国が公然と主張したことのない新説ともいうべき主張である。
Taipei Timesはこのような中国の主張を新たな「法律戦」と呼び、これを全くの「たわごと」(poppycock)であると一蹴しているが、中国側のこのような言説には、警戒が必要である。
このような「法律戦」は、台湾海峡のみならず、東シナ海、南シナ海の海域を自らの主権の範囲内とする一方的な領土拡張の覇権主義に繋がっており、尖閣の領有権のことを考えれば日本としても断じて看過することは出来ない主張だろう。
振り返れば、1998年、江沢民下の中国は、台湾北部沖合と南部沖合に対し、ミサイルを発射し、台湾を威嚇したことがある。台湾が初めて民主主義に基づく総選挙を行い、李登輝総統を選出した時である。
この時、クリントン政権下の米国は、2隻の空母を台湾海峡に急派したのに対し、中国はなすすべなく後退したことがあった。この「台湾海峡危機」においてさえ、台湾海峡が、中国の内水である、などという主張を中国は行ったことはない。
その後の中国の防衛費増額などを考えれば、軍事力強化の今日と25年前との違いは歴然としている。そして、最近中国が建造した第3隻目空母「福建」には、台湾対岸の省名がつけられており、中国の台湾侵攻を狙う特別の思いさえ感じることが出来る。
中国の「法律戦」のようなフェイク・ニュースに惑わされることなく、日本としては台湾海峡の平和と安定の重要性を堅持する姿勢を貫く必要があることについては、多言を要しないだろう。