2024年7月21日(日)

解体 ロシア外交

2013年4月15日

 この動きを受け、ロシアの公の動きも活発になってきた。これまでロシアはEUとの関係悪化を恐れ、キプロスからの支援要請に応じてこなかったが、プーチン大統領が2011年に融資した25億ユーロについて、返済繰り延べなどの可能性を検討するよう政府に命じるなど、独自の支援策でキプロスへの影響力維持を模索し始めた。EU圏に勢力圏を確保することは、ロシアの外交上、うま味が多く、さらにキプロスを救済する金など、ソチ五輪に比べればほんの小さな出費であり、それでEUの鼻を明かせるならや安いものである。

 他方、EUの支援策が高額預金者に損失負担を強いた問題について、ロシア側のEU、特にドイツ批判が激しくなっていった。

 また、この流れの中で、キプロスで活動するロシア人の脱出が続出し、法廷闘争の準備をする者も出てきた。また、アンドラ公国、ラトビア、スイス、ドイツなど欧州各地の銀行からロシア人活動家への接触が多発し、銀行によっては一時間以内に口座を開設すると強調したという。他方、ロシア人が経済的にも観光業的にも最適な顧客だったキプロスにとっては、その流出は弱り目に祟り目の打撃である。キプロスにとっては、たとえそれが闇経済的な動きであろうと、ロシア人が経済活動をしてくれれば、どうでも良いともいえるだろう。

ロシアの外交への影響
独露の間の「冷たい空気」

 こうして、キプロス危機は何とか解決の道筋が見えてきた状況だが、そこに残ったのは、ロシアとEU、特にドイツとの冷たい空気であった。キプロス危機に関するEUの交渉からロシアは外され、その上で、(いくら闇経済の汚い金とはいえ)ロシア人に負担を強いるような決定を主導したドイツへの不信感は強い。ロシアとEUの関係が微妙な中、ロシアとドイツはずっと蜜月関係にあったが、今回のことで大きな亀裂が入ったことは間違いない。

 さらに、最近、ロシア政府が国内の反対派やNGOへの弾圧を強化していることに欧米諸国は厳しく反発している。ロシアは「内政干渉」として、EUやドイツへの反発を強めている。

 このように、さまざまな側面からロシアの反EU、反ドイツ意識が強まる中、ロシアにとって救いの神になったのは中国だった。中国の習近平国家主席は就任後初の外遊先としてロシアを選び、3月22日に訪露したのだ。首脳会談では、中露間の戦略的パートナーシップを確認した共同声明も発表された。特に、ともに領土問題を抱える日本、そして米国に対抗することで一致し、経済や文化などの各分野で20余りの合意文書にも署名がなされた。ロシアから中国への石油・ガス輸出拡大協議にも進展が見られたという。

 さらに、3月26日には、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカという新興5カ国(BRICS)の首脳会議が南アフリカのダーバンで開幕し、発展途上国支援を目的とする「BRICS開発銀行」の設立について基本合意が成立した。本銀行の計画や出資は、中国が主導しており、中国のアフリカ進出の足掛かりと目される一方(そのため、ロシアの警戒心は実は非常に強い)、IMFや世界銀行を中心とする欧米主導の経済秩序に直接対抗する要素も強く、キプロス情勢からの流れで考えるとさらに興味深い。

 このようにキプロス問題を受け、ロシアとEUの関係が悪化する一方、ロシアと中国の関係が緊密化していったことは興味深い。ただし、中露間には広範な利害の一致があるものの、非常に根深い相互不信もあり、両国の絆の礎はやはり対米関係での共同路線だと言えそうだ。

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