2024年4月19日(金)

WEDGE REPORT

2022年7月13日

現実味欠くロシア代表権のはく奪  

 国連常任理事国でありながら他の主権国家を侵略、しかも、その資格に疑義が生じたとなれば、追放を求める声が出るのは当然だろう。しかし、実際にロシアを国連から追放することは不可能に近いといわざるをえない。

 国連憲章6条では、憲章の原則に執拗に違反した加盟国は、安保理の勧告に基づいて除名することができる――と規定されている。しかし、「安保理の勧告」が条件とされる限り、拒否権を持つロシアが自らの除名に賛成するはずがない。

 拒否権を乱用する横暴ロシアを追放しようとしても、その拒否権自体を盾に阻止されるというのだから皮肉な話というほかはない。もっとも、国際法の専門家のなかには、ソ連の権利義務を引き継いだロシアの代表権には何ら問題がないと指摘する向きもある。そうだとすれば、現在の議論は、ウクライナ侵略を非難する政治的な動機からとみるべきだろう。

〝第3次大戦〟後の巨大機関は中・露ぬき?

ロシア代表権の議論を踏まえ、いっそ現在の国連から有力国が脱退し、それらの国を構成員として、あらたな国際機関を創設してはどうかという提案がなされている。

 ブルガリアの外交官出身で、国連大学の教授などをつとめたヴェセリン・ポポフスキー氏は最近、「国連に代わる新たな世界機関」という論文で、大胆な見解を表明した。

 氏は、シリア、ミャンマー情勢をめぐって、ロシア、中国の拒否権発動のために、安保理が機能不全に陥った――と指摘。国連内部から改革を目指すか、さもなければ、一国だけの反対で平和と安全が脅かされることのない新たな国際機関を創設するか――と問題提起。「常任理事国が無関心な事態、各国の主張が一致する問題しか解決できない組織」ではなく、中国、ロシアの除いたあらたな機関の設置が最適と自答する。

 むろん、こうした構想がすぐに実現することはありえないが、ポポフスキー氏は専門家に広く呼び掛けており、国連改革論議をめぐる〝百家争鳴〟に発展する可能性はあろう。

 ウクライナ侵略戦争の帰趨はいまだ見えない。終息後の世界秩序も不透明だ。

 今回の侵略をすでに〝第3次世界大戦〟ととらえる向きもある。第1次大戦を機に国際連盟が創設された。第2次大戦後には現在の国際連合が発足した。〝第3次大戦〟後の巨大国際機関は、はたしてどうなる? 

   
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