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田部康喜のTV読本

2022年7月21日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 世界平和統一家庭連合の創設者が設立した、UPF(Universal Peace Federation)の21年9月の集会である。全世界からオンライン参加も含めて、数百万人が参加したという。ビデオメッセージを寄せた、各国の首脳のなかには、当時の米国大統領のトランプもいた。

 安倍元首相のメッセージの内容は、次のようなものだった。

 「演説する機会を与えてくださったことを光栄に思います。UPFの平和ビジョンにおいて、家庭の価値を強調する点を高く評価致します」

取材対象の反論を織りなすジャーナリズム

 世界平和統一家庭連合の記者会見において、会長の田中は、このビデオメッセージについて、こう答えている。

 「多くの世界の指導者と共に推進されていらっしゃる世界平和運動に対して、(安倍元首相は)賛意を表明してくださっておりました。ただ、宗教法人『世界平和統一家庭連合』の会員として安倍元首相が登録されたこともありませんし、また、顧問になったことはございません。いずれにしろ、教会に対する恨みやそこから安倍元首相の殺害に至るということは、とても大きな距離があって、わたしたちもその理解に少し困惑しております」

 事実と、取材対象の反論とを織りなしていく。ジャーナリズムの正当な姿勢である。事実によって、真実に近づくのである。そのためには、「反論」も傍証になり得る。「反対」と「追及」の一本槍では実は、真実に近づきがたい。

 社会党委員長の浅沼暗殺から、沢木の『テロルの決算』まで、20年近くの年月が必要だった。事件直後、ノーベル文学賞受賞者の大江健三郎が、この事件を題材にした小説『セヴンティーン』(1961年1月)を発表した。センセーショナルをもって登場した作品は、当時相次いだテロの影響もあって、第2部を含めた完全出版にこぎつけるまで時間を要した。

 今回の事件は、メディアのジャーナリズムの姿勢が大きく問われる。

  
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