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田部康喜のTV読本

2022年7月21日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 放送の当日、世界平和統一家庭連合の会長・田中富広が記者会見を開いて、次のように語った。

 「第1に、山上徹也容疑者は当法人の信者ではございません。過去においても当法人の信者であったという記録は存在しておりません」

 「第2に、山上徹也容疑者の母親は当法人の教会員であり、これまでも1カ月に1回程度の頻度で教会の行事に参加してまいりました。献金問題に関しましては現在、警察が捜査中であると思われますので、この場での言及は避けさせていただきます」

 メディアの事件報道は、短時間の取材の瞬発力と、日ごろからの準備ともいえる取材活動にある。

信者らの証言から見えてくる事実

 取材班は、教団の元信者と、山上容疑者の母親が通う「奈良教会」の信者の証言を得る。

 「侍義生活ハンドブック」という、教団の信者向けの文書を入手、収入の10分の1を献金するようにうながす記述をまず明らかにする。

 「山上容疑者の母親の名前はときどき出てくる」という、同じ教会に通う男性信者は、次のように語る。

 「わたしも両親も多額の献金といえば、家を1軒売るぐらいの献金をしてきた。田んぼとか家、屋敷、みんな抵当に入ったりして。二束三文になるわけですよ。それでもやっぱり教会のことだから、2000万、3000万は出していたんじゃないですか」

 元信者の女性は、両親が信者であるという。彼女自身が、6年間で献金と印鑑の購入などで約500万円を教団のために費やしたという。

 「わたしたちの家庭は平和になれるからと親が本気で信じていて、自分の生活費とか学費とか、そういうところも全部献金につぎ込んでしまう」

 「親と信じるものが違うって、こんなにつらいんだって、自分じゃどうしようもないことと思う」

 さらに、この元信者は、山上容疑者の母親が信者であることと、自分の境遇が似かよったものであることから、いわれなき誹謗、中傷にこれからさらされるのではないか、とおびえている。

 「犯人(山上容疑者)の供述がまるで、自分の周囲で起きていたこと、周りの人たちが経験してきたこととまるで同じことを言っていて。それがとんでもなく苦痛です」

 「山上(容疑者)がやった暴力は絶対断固として認めない。どんな立場であろうが。非難という言葉じゃ、表せないほどの強い憤りを犯人に感じています。これはわたしだけではなくて、こうやって苦しんでいるわたしたちのような境遇の人たちにも共通する意見です」

 山上容疑者が凶行に及んだ、ひとつのきっかとなったビデオを番組は流した。メディアが「安倍元首相のビデオメッセージ」と報道している。やはり、実物を見せることも映像報道の神髄である。


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