2024年12月26日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年8月4日

 7月7日、英国のジョンソン首相はついに保守党党首を辞任した。ただし、次期党首が選出されるまで、首相としては暫定的にとどまる。

Panorama Images/iStock/ Getty Images Plus

 ジョンソンが首相に選出される前、英国のフィナンシャル・タイムズ紙やEconomist誌は彼が首相の資質を欠くことを散々書いた。Economist誌は、保守党は窮地に陥ると異端者に賭けるという大博打を打って来たが、ジョンソンは危険な賭けである――リスクがこれほど高く、上手くいく可能性がこれほど低いことは近年なかった――と警告した。不幸にして不安は的中した。

 ジョンソンの転落の原因は彼の政治に対する誠実さ・真剣さの欠如にある。奇矯な行動、奔放なルール破り、嘘と誤魔化し、国際約束の軽視がそれである。

 7月5日、スナク(財務相)とジャビド(保健相)が相次いで辞任してダムが決壊した。その後に閣僚や政府高官の辞任が奔流となるに至ったが、彼には適材をもって空席閣僚ポストを埋める術がなく、実際上、政権維持の道を断たれることとなった。

 7月7日のジョンソンの辞任演説に悪びれたところは微塵もなく、彼は「過去数日間、政府を交替せしめることは常軌を逸している(eccentric)と同僚の説得を試みた」「しかし、群れ(herd)は強力で動く時には動く」「政治においては誰しもおよそ必要不可欠ということはないのだ」と述べたが、彼の怒りの表現のようである。他方、フランスの財務相ル・メールは「彼を惜しむことはないだろう」と述べたが、欧州連合(EU)全体の感情を代弁するものであろう。

 ジョンソンの遺産の最大のものはBrexitである――彼にBrexitが国益だとの確信があったかは疑問であるが。予見し得る将来、EUへの復帰が議論になることはない――7月4日の講演で労働党党首キア・スターマーは労働党政権において「英国はEUに戻ることはしない」と述べ、Brexitを機能させる提案(Make Brexit Work)を行った。


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