2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年4月6日

 3月14日、英国が主導する北欧10カ国の連合であるJEF(Joint Expeditionary Force=統合遠征軍)の6カ国首脳を含む代表が初めてチェッカーズ(英国首相別邸)で会合した。エコノミスト誌3月19日号が報じたところによれば、彼らは、ウクライナが要請する武器その他の装備を「相互に調整し、供給し、資金を手当てする」ことに合意した。

 また、彼らは、JEFは訓練と「前方防御」を通じてロシアの更なる侵略 ――北大西洋条約機構(NATO)を妨害しあるいはNATOの敷居に至らないようなウクライナの国境外での挑発を含め ―― を抑止することを狙いとする、と宣言した。

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 JEFは、その存在がほとんど知られていないが、10年前に即応部隊として設立され、英国、アイスランド、オランダ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニアの10カ国から成る。NATOと異なり、危機への対応の意思決定がコンセンサスを要しない点が大きな特徴である。

 英国にとって、JEFを通じる活動はNATOの北辺における伝統的な軍事的役割を再構築し、同時に英国にとっての自然な同盟国との間にBrexit後の関係を作るものであると言えるだろう。

 このJEFが、ウクライナ危機に際して有効に機能しているということのようである。2月末に中立を標榜するスウェーデンとフィンランドが相次いでウクライナに対する武器供与を表明したが、その背後に、このグループがあったのかも知れない。

 ウクライナの戦争への対応を巡る議論において、プーチンを追い詰めることは危険であるとして、彼のための「出口車線、取引き、逃げ道」の必要性を説く向きが多いが、現時点では有害である。それは一種の宥和策であり、プーチンに彼は正しい軌道にあると確信させ、その結果は必然的にウクライナに犠牲を強いることになるからである。


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