2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年8月4日

 フィナンシャル・タイムズ紙のロバート・シュリムズリーによる7月7日付け論説‘Boris Johnson goes, but what comes next?’は、党首選挙の候補者の間にBrexitに関して政策に大きな差はないと予測しているが、Brexitに伴う混乱(特に、北アイルランド議定書の問題)を収拾することは優先度の高い課題と言うべきであろう。

後継首相候補らが進めようとするものは?

 もう一つの大きな遺産は、Brexitを最終的に確かなものにした2019年12月の下院選挙における保守党の地滑り的勝利である。「Brexitを片付ける(Get Brexit Done)」というスローガンが政治の膠着に飽きた有権者に浸透した。

 ウェールズからイングランド北東部に跨る労働党の牙城に切り込む戦略が功を奏した。この遺産を継承し、この地域の議席(red wall seats)を繋ぎ止めるためには地域の底上げの公約を実現する必要があるが、それに要する高水準の財政支出が保守党本来の減税と抑制された歳出の方針と衝突することはこの論説に説明がある。いずれにせよ、有権者の関心は生活費にあり、党首選挙の焦点は経済・財政政策になるようである。

 候補者は乱立気味であったが、7月21日には保守党議員による投票で、スナク前財務相とトラス外相の2人に候補が絞り込まれた。スナクは財政規律を重視し、トラスは外交的にタカ派である(ウクライナ戦争に積極的でありかなりの対中強硬派でもある)。

 党員投票を経て、9月5日に議会が再開される前に後継首相が決まる予定である。世論調査等では、今のところ保守党員の支持はトラスに大きく傾いているようだ。

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