2024年11月21日(木)

経済の常識 VS 政策の非常識

2022年8月13日

 自由な経済の中に自由でない経済を持ち込めば、それだけ腐敗の余地は高まる。オリンピックとは、オリンピック委員会が、その活動において独占企業を指定して、協賛金を得るという仕組みである。

 東京地検特捜部が、大会組織委の高橋治之元理事、電通元専務が、スポンサー選考の際にAOKIホールディングスからスポンサー選定の見返りに賄賂を受け取ったとして捜査している。AOKI はスポンサー料として約5億円を支払ったが、別途、高橋理事とコンサルタント契約を結び、4500万円を支払った。さらに、高橋元理事が経営するコンサルタント会社に2億3000万円を支払った。

 うち、数千万円は日本セーリング連盟と馬術競技の団体に提供されたが、残りの約1億5000万円は元理事側の手元に残ったという(「組織委元理事に直接要望か AOKI側、五輪事業絡みで」日本経済新聞2022年8月2日朝刊、など)。売上が賄賂で決まるなら、健全な企業活動は低迷し、経済は停滞する。

ウクライナの腐敗は改善される

 ロシアの体制をウクライナ国民が憎んでいるのだから、国営企業は民営化される。言論は自由で野党もあるのだから汚職や賄賂は報道され、批判される。ウクライナの腐敗指数も民主主義指数も大きく改善されるだろう。

 欧州先進国の基準では、ポーランドの民主主義も腐敗度も高く評価はされている訳ではない。ポーランドは民主主義で51位、腐敗で42位である。しかし、それでも1人当たりGDPが3万ドルを超えている。ウクライナがポーランド並みになるのは確実である。

 ウクライナも問題を認識し、汚職撲滅のために、オルガルヒ(財閥)の政治献金を禁止し、メディアへの影響力を縮小させる「反オルガルヒ法」を施行し、空席だった特別汚職対策検察庁を指名し、政治に動かされない若い世代の裁判官の登用を進めるという(「ウクライナ副首相、EU加盟「10年以内に」」日本経済新聞2022年8月2日)。

 
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 ロシアのウクライナ侵攻は長期戦の様相を呈し始め、ロシア軍による市民の虐殺も明らかになった。日本を含めた世界はロシアとの対峙を覚悟し、経済制裁をいっそう強めつつある。もはや「戦前」には戻れない。安全保障、エネルギー、経済……不可逆の変化と向き合わねばならない。これ以上、戦火を広げないために、世界は、そして日本は何をすべきなのか。
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