2024年11月29日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年8月24日

 8月4日付のTaipei Times紙の社説は、ペロシ米下院議長の台湾訪問が、台湾海峡の緊張を一挙に高めることとなったことを認めつつ、このような緊張は中国共産党が武力行使を放棄し、台湾が中国の「不可分の一部」というような誤った主張を取り消さない限り、解決されないだろう、と述べている。もっともな主張である。

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 台湾の蔡英文政権も、中国がペロシ下院議長の訪台を批判していることについて、これは事実を捻じ曲げ、「危険な軍事演習」の口実として利用していると反論している。

 最近、ウクライナ危機をきっかけにして、台湾の住民の中では、いざという台湾有事の際に、米軍は支援のために駆けつけてきてくれるだろうか、との疑問を呈する人たちが多くなっている、というのが世論調査の示すところだ。この点に関する限り、今回ペロシ一行が台湾を訪問し、台湾を「見捨てることは無い」、「台湾を孤立化させない」との明確なメッセージを打ち出したことは米台関係への影響だけではなく、独断的な中国の拡張主義へのきわめて有効な警鐘になったものといえよう。

 ペロシ訪台を口実にして、中国からの対台湾への軍事的威嚇が高まりつつある状況の中で、台湾世論の大勢がペロシ訪台を歓迎したのはTaipei Timesの指摘のとおりである。

 米国政府の報道官は、ペロシ下院議長の訪台は、米国の対台湾、対中国政策である「現状維持路線」を何ら変えるものではなく、米国としては引き続き「一つの中国政策」を維持すると述べている。また、ペロシ下院議長の台湾訪問は、25年前のギングリッチ下院議長の訪台という前例を踏襲して、今回、他の超党派の米国議会の議員と一緒に訪台したもの、と説明している。

 そうはいっても、米国大統領への第2の後継者ともなりうる下院議が超党派の米国議会議員たちと一緒に軍用機で訪台し、立法院(一院制議会)でスピーチを行い、蔡英文総統と会談し、勲章を授与されたこと自体、通常の訪問では考えられないこと、といえよう。


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