2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年9月8日

 また韓国の文在寅前政権は、もっときちっとした交渉をすべきだった。国同士の約束や協議結果は守るべきものだ。そうでないと外交継続に基づく信頼性の置ける外交は出来ないし、米中等の間に立って右顧左眄の日和見主義の外交になってしまう。

光復節での演説で見えた対日姿勢

 尹錫悦政権の対中関係は今後難しい舵取りを迫られる。韓国は新政権初の両国外相会談を予定通り開催すべく、直前の米下院議長ペロシの訪台については一切対外コメントを出さず、ペロシ訪韓に当たっても尹錫悦は夏季休暇中としてペロシと対面会談はしなかった(ソウルに居たにも拘わらず。最終的には電話で会話したがそれでも対米関係上の失策となった)。

 他方、中国は今回会談の主要目的を対韓関係の基本につき新政権に釘を差すことに据えたであろう。王毅外相は、「5つの必須事項」として、①独立自主を堅持して外部の干渉を受けずに、②善隣友好を堅持して重大な懸念に配慮して、③開放とウィンウィンを堅持して供給チェーンの安定と円滑さを守り、④平等尊重を堅持して相互に内政に干渉せず、⑤多国間主義を堅持して国連憲章の原則を順守しようと述べ、両国関係の基調を中国側からセットしようとした。

 尹錫悦の対日姿勢については、8月15日に行われた、日本による植民統治からの独立を祝う光復節での演説が注目に値する。尹氏は対日関係につき、「普遍的な価値を基盤に、両国の未来と時代的な使命に向かって進む時、歴史問題もきちんと解決することができる」、「かつてわれわれの自由を取り戻し、守るために政治的な支配から抜け出さなければならない対象だった日本はいま、世界市民の自由を脅かす挑戦に対し、力を合わせていかなければならない隣人(英文では「パートナー」)」だと述べた。

 また、1998年の小渕・金大中宣言に言及、「宣言を継承して韓日関係を早く回復させ、発展させていく」と述べた。徴用工の問題など懸案への言及はなかった。

 演説の対日ナラティブは基本的に前向きなものであり、評価できる。なお、歴代政権と同様に戦中の韓国独立運動の活動を強調、独立は韓国民の手で勝ち取ったものだとの新たな歴史観の推進を図っているように見える。

   
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