6月29日付の中央日報社説が、尹錫悦大統領の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議への出席は、同氏にとり良い外交の出発になった、岸田文雄首相とも短い会話を交わしたと述べている。
韓国の尹錫悦大統領は、NATO首脳会議が行われた際、6月28日のスペイン国王晩餐会で、岸田首相と言葉を交わした。韓国側発表によれば、「3~4分程度」の短いもので、岸田首相が先に尹大統領に近づいて声を掛け、尹大統領の就任と統一地方選挙の勝利を祝い、尹大統領は「岸田首相も参議院選挙で良い結果が出ることを願う」と答えたという。
更に尹大統領は「参議院選挙が終わった後、日韓間の懸案を迅速に解決し、未来志向的に進む考えを持っている」と説明したのに対し、岸田首相は感謝の意向を伝え「尹大統領が日韓関係改善のため努力してくださっていることを知っている。日韓関係がより健全な関係に発展できるよう努力しましょう」と述べたという。
尹錫悦は6月29日の略式会見で岸田総理について「日韓関係を改善させ、両国の未来に共通の利益をもたらし関係を発展できるパートナーになれると私は確信するようになった」と発言した。
日本側は、磯崎仁彦官房副長官が、6月30日の記者会見で、この両首脳の会話に関し、岸田首相から尹大統領に話しかけ、「非常に厳しい日韓関係を健全な関係に戻すために尽力いただきたい」と求めたことを説明した。
尹錫悦の日韓関係改善の意思は真正であると思われるも、文在寅政権下の大法院判決が絡んでおり、韓国新政府が解決策に苦慮しているのであろうことは想像できる。韓国は、日韓の企業や個人の拠出で300億ウォン(約31億円)程度の基金をつくり訴訟の原告に慰謝料名目で金銭を支給する案を検討しているとも言われる。
しかし、問題は二つある。一つは、関係者への補償をする場合は、韓国政府が国内措置としてやるのであれば日本としてはとやかく言うことではなく、それは1965年協定に整合するということである。第二は、将来日本企業に対する訴訟が延々と出て来ないようにすることである。
要するに日韓関係を1965年協定という国際約束に基づいて運営していくとの基本的立場を再確認することが出発点とならねばならない。1965年協定を基礎として、両者の努力により問題を解決することが必要である。事柄の本質が未だ韓国側には十分に理解されていないようで、心配する。