2024年11月28日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年9月12日

 米国外交問題評議会のリチャード・ハース会長が、習近平は権力の正当性を経済成長からナショナリズムに移さざるを得ない、その際台湾に勝る事柄はない、米国等は対中抑止力強化のほか対中貿易依存の縮小等の対応を取って行くことが必要だと、8月11日付のProject Syndicateで述べている。

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 ハースの主張を纏めれば、次の通りである。

(1)中国の軍事攻勢は、意図した過剰反応だった。長い間計画されていたものだろう。

(2)中国指導部の正当性の拠り所であった経済成長は望めなくなり、代わりにナショナリズムに益々依存することになる。その際台湾に勝る事柄はない。

(3)台湾周辺での軍事活動が新常態になれば、偶発衝突が制御不能に発展するリスクが増大する。中国は、台湾の民主主義と独立への動きを止めるために武力行使を決めるかもしれない。

(4)何をすべきか。第一に、対中抑止力を再構築する。第二に、対中貿易・経済依存を縮小する必要がある。第三に、賢明な台湾政策が必要である。「ひとつの中国政策」は維持しながらも、一方的な行動は受け入れられず、台湾の地位は、平和的に且つ台湾人の同意により決定されるべきである。

(5)米中間の非公式、ハイレベルの対話を構築する。中国を変革しようとする試みは優先事項ではない。

 ハースの論説は、バランスの取れた見解である。何れのポイントもその通りであろう。

 台湾に対する政策は、的確に書かれている。台湾の将来は、台湾人が決めるべきことであり、平和的に解決されるべきだとは、その通りである。

 なお、先般のペロシ米下院議長の訪台について、8月20日付のワシントン・ポスト紙は、検証記事の中で、①7月28日習近平がバイデンに電話でペロシの訪台中止を求めてきた、②ペロシは、バイデンが直接要請してくるか、蔡英文が招待を撤回する場合にのみ再考する意向だった、③バイデンはペロシと直接話すことはなかったという。


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