加藤 昔は大きな基地局には大きなコンピューターがありましたが、最近は5Gの時点で分散化が始まっているので、おのおの小さく、軽く、省エネにということですね。
江﨑 同じ問題は実はコンピューターにも起きています。僕は米フェイスブックや米グーグルが運営しているデータセンターにも関わっていますが、たくさんの計算をしなければいけないので、熱密度がどんどん上がっているんです。
根本的にエネルギー効率を上げないとデータセンターがもたないというところまで来ている。それと同じことが、5Gから6Gのところで起ころうとしています。
瀧口 熱を冷やすのに大きなエネルギーが必要になっている。そこをいかに下げていくかということですか。
江﨑 そもそも熱を出さないようにしよう、ということですね。
黒田 皆さん、ホットプレートで焼き肉とかをするでしょう。それよりも10倍ぐらいの密度当たりの熱を出しているんですよ。
加藤 コンピューターってファンとかがあるからそんなに熱くないですけど、普通に目玉焼きができちゃいますからね。
江﨑 できます。
黒田 焼けちゃいます。
江﨑 もう空気で冷やせないからと、水で冷やす動きもありますね。
黒田 データセンターごと海中に沈めるなんて実験もありますね。
とことんコンピューティングしようと思うと、とことん熱が出てしまう。それを極端に抑えてファンが回らないようにしているのが、スマートフォンです。これをもっと性能を上げて、かつ、もっと電力を使わないようにすることが今、求められている。5G、6Gは最先端の半導体技術がものすごくたくさん使われます。
地球温暖化対策の議論が非常に盛んに行われていますよね。その地球を暖めるエネルギーの大きな原因は、情報社会を支える電子機器です。さらに今後はデータがものすごく増えますし、データの処理がものすごく複雑になっていますから、どんどんエネルギーを使う一方なんですよね。
江﨑 米国では今、大体3%から5%ぐらいの電気がデータセンター業界で使われているんです。これが加速度的に増えています。
黒田 10年後には電力使用量は約2倍に、何もしないで放置しておくと2050年には200倍になっているだろうと言われているんです。
宇宙を経由した方が
通信が速くなる時代
瀧口 では、6Gの世界とはどのようなものになるのでしょうか。
江﨑 今の電波って地上の基地局から発せられているんですけど、6Gになると、「上を向いて歩こう」になる。低軌道の衛星がどんどん打ち上げられていて、6Gはこれを使ってインフラを造ろうとしています。
黒田 全地球測位システム(GPS)は、空から電波が下りてきて、自分の位置を確認していますよね。
加藤 通信もそうなり、むしろそちらの方が速くなっていくと。
江﨑 そうです。プラスチックやガラスのケーブルである光ファイバーは、光の半分ぐらいしか速度が出ないんです。でも、空中や宇宙では光の速度なので、衛星を使った方が速い。それを狙っているのが、テスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏ですよね。
加藤 衛星を飛ばす軌道は先に取ったもの勝ちというのもありますね。
黒田 そこらへんの国際ルールづくりって必要ですよね。
江﨑 実は南極や北極もそうなんです。どこかの国の領土ではないんです。北極は、地球が暖かくなって、海底ケーブルが簡単に敷けるようになってしまったので、北極海の環境を用いたデータセンターなどのデジタルインフラに関して、ものすごい革命がこれから起こりますね。