ウクライナ戦争後の急増は顕著で、8月の中国の対露輸入は前月比6割増で過去最大である。特にロシアからの原油輸入は5月以降サウジアラビアを超え、中国の輸入先トップになっている。一方、ロシアの対中輸出の約8割は資源で、増えているのはその部分のみであり、これはロシアの対中従属性を示している。
国力弱まるロシアへの外交戦略
第三に、今回一層明白になった注目点は、中央アジアを巡る中露の力関係の行方だ。習はSCOサミット出席前に、ロシアと隙間風があるカザフスタンを訪問した。その際のトカエフ大統領との首脳会談で、心の底ではロシアの侵攻を警戒する同国と共に「領土の一体性尊重」を強調したのは、ロシアとの関係では相当の事である。
なおトカエフは、6月のサンクト国際経済会議で、ウクライナ東部の親露派地域を正式な国家とは認めないと明言している。今回、習はカザフとウズベクスタンから勲章を授与され、ベラルーシと全面的パートナーシップを締結したのに対し、プーチン大統領はウズベク大統領に勲章を授与した。ロシア・キルギス首脳会談に遅刻したのは、常習犯のプーチンではなくキルギス大統領の方だった。
中央アジア諸国では、ロシアがウクライナに集中する中、各国間の紛争が表面化した。タジク・キルギス国境紛争は、両国駐在のロシア兵のウクライナ投入による影響もあろうし、アルメニア・アゼルバイジャン国境紛争は、トルコの支援を受けるアゼルの仕掛けという見方もある。ペロシ米下院議長がアルメニアを訪問し、米国務長官による仲介をアルメニアが発表したのは、アルメニアの同盟国であるロシアにとっては屈辱的だろう。
最後に、国力が低下し孤立を深めるロシアが中国を必要とする度合いは増加する一方、台頭する中国にとってのロシアの意味は相対的に低下する。その中で、ロシアが持つ数少ない優位性の一つである中央アジアとの関係に中国が手を突っ込みすぎると、ロシアの第三国との関係が相対的に緊密化する可能性もある。
過去の歴史から見ても、その相手は、インドではなかろうか。これは日米や西側諸国にとって悪い話ばかりではない。