常勝軍団などあり得ない
だからこそ継続と発展目指す
「『常勝』という言葉はあり得ないと思っています。どんなスポーツでも、どんなに強いチームでも、調子のいい時もあれば悪い時もある。ただ、最近では『強いフロンターレが好き』というファンも増えてきていると感じます。だからこそ、今までやってきたことを継続しながらプラスアルファの価値を生み、勝てない時にも応援し続けてもらえるクラブにしたい」。こう語るのは今年4月、社長に就任した吉田明宏さん。
「『ものビジネス』ではなく『ことビジネス』に力を入れたいです。これまで築いてきた地域との信頼をもとに、フロンターレをいい意味で地域の方々に〝利用して〟もらいたいと思っています。クラブや選手とタイアップして『一緒に』何かを体験してもらうことで、地域に活気がわき、クラブのことも好きになってもらう。こうした形を、次の当たり前にしたいです」(吉田さん)
天野さんも、吉田社長も、他クラブのスタッフから「どうしたらあれだけ集客を伸ばせるんですか」と聞かれたことがあるという。
「簡単に観客動員数を伸ばせる魔法はありません。小さなことの積み重ねが結果的に集客につながっているだけです。それに、長年かけて積み上げてきたものでも崩れる時は一瞬です。恵まれている時にこそ、地域に密着した活動に積極的に参加するんです。スポーツを通じてクラブに携わる人はもちろん、日本中の人が幸せに、豊かになれればそれでいいと思っています。勝ち負けはその手段でしかありませんから」(天野さん)
未来のことは誰にも分からない。だが、来シーズンのホーム開幕戦も、等々力競技場がサポーターで埋め尽くされ、満員になる――。これは間違いないだろう。