2024年11月22日(金)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年11月27日

ザンビアでの活動で感じた
限界と教訓

 米国留学後、年齢的にもラストチャンスということで、海外で再びプロ選手を目指し、運良くスウェーデンのプロチームに加入することができました。でも、言語の壁や実力が足りず長く続けることは叶いませんでした。

 契約延長が難しいとわかったときに、改めて今後のキャリアを考え直しました。米国でのNPO活動や留学中のさまざまな活動を通じて「女子教育」をしたいという思いが強くなりました。もともと国際協力活動にも興味があったこともあり、発展途上国支援ができないかと考えました。インドやカンボジア、ザンビアという候補の中から、たまたま縁をいただけたのが、アフリカのザンビアでした。

 スポーツを通じて子どもたちに必要な教育をするという大きな目的は米国での活動と変わりません。ただ、「女子」教育である点と、そこにある社会的な課題が異なっていました。ザンビアの学校では当時、保健教育が行われていなかったため、安全な性交渉や月経に関する正しい知識など、性教育を受ける機会がありませんでした。「なぜ子どもが生まれるのか」ということを、正しい知識で理解できている若者ばかりではありませんでした。

米国とザンビアでは、現地の社会的な課題が異なっていた (野口亜弥さん提供)

 また、収入の柱が男性であることもあり、家庭内の家事や育児が女性の役割であるという性別役割分業も強く見られました。男性に生活資金を頼らざる得ない状況では、女性は家庭内で弱い立場におかれてしまいます。女性へのリスペクトを欠く行為も少なからずあります。そのため、性と生殖に関する正しい知識が広がっていない、社会的に女性が弱い立場におかれてしまうという課題が、HIV・エイズなどの感染症が蔓延している要因となっていました。

 ザンビアでもサッカーを教える活動をしました。普段の生活ではあまり見かけないアジア人女性がサッカーボールを持っている光景は、珍しさもあってそれなりに人も集まりました。ただ、ザンビアでは「サッカーは男性のスポーツ」という意識も根強かったため、なかなか女の子は集まりませんでした。

 そこで、より女の子に馴染みがある「ネットボール」というスポーツも取り入れました。日本ではあまり知られていませんが、バスケットボールのようなスポーツです。このスポーツは女子にも人気で人も集まるので、スポーツを楽しんだ後で、月経が起こる身体のメカニズムについて教えるような性教育や人権教育をしました。女性にも尊重される「権利」があることを、多くの子どもたちはそうした場で学ぶのです。

 一方で、「難しさ」を感じることもありました。例えば、こうした活動を通じて出会う子どもたちから「生活が苦しい」「金銭的なサポートをしてほしい」とお願いをされることもあります。そうした言葉を聞いても、も、外国人である私は子どもたちが置かれている状況を正確に把握することは難しかったです。それに、そこで安易に手を差し伸べたところで何の解決にもつながらないのではないかと葛藤していました。

 こうした国での活動についても、本来的にはその国に住む人々自身が「何を望むか」「どういう環境にしたいか」といった考えを持っています。ザンビアには「自分でも何かに貢献できる」「手伝える」と思って行ったのですが、そうした考え自体が傲慢だったと感じました。もちろん、現地の人々は、経済的なサポートや専門的なスキル・知識を外国人に頼る部分もあります。それでも、一緒に何かをする時に、どういう立場で、どのような行動をするかということを突き詰めて考えると、外国人であることの「限界」も私自身が理解する必要があると感じました。

発展途上国支援でザンビアへ渡った(野口亜弥さん提供)

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