スポーツとジェンダーを
アカデミアの道で究める
米国やザンビアでの経験を経て、スポーツとジェンダーの中でも、スポーツを国際課題や社会課題に活用する「開発と平和のためのスポーツ」の分野に自分の興味が向いていることが明確になりました。帰国後はスポーツ庁に勤務し、国際課で東京五輪・パラリンピックを契機にスタートしたスポーツ国際協力事業にも携わりました。
ただ、政策レベルでスポーツ国際協力を推進すればするほど、自身が現地で感じてきたこととの矛盾も強くなりました。そこで、ジェンダー平等社会実現のためにスポーツはどのような役割を果たすことができるのか、追及し、次世代に伝えていきたく大学教員の道を歩むことにしました。
同時に、海外での学びを日本でも実践する場をつくろうと「S.C.P. Japan(Sport for Creating Pathways Japan )」を立ち上げました。スポーツを通じて性別や性的指向も、障害の有無、人種の違いに関わらず誰もが自分らしく安心して生きていくことができる共生社会を目指しています。
日本でも少しずつスポーツ界におけるジェンダー平等を進めようという機運が高まっていますが、まだまだ胸を張れる状態には達していないと思います。私が知る限りでも、例えば米国には「タイトルナイン」という法律があり、公的な教育プログラムにおける男女平等が保障されています。スポーツ現場でいうならば具体的には、奨学金プログラムの数や指導者の給与なども性別によって優劣をつけることは法律違反になります。
また、私自身も大学時代に経験しましたが、日本では練習で使用するグラウンドの予約についても、男子チームが優先される傾向が強いです。女子チームは残された早朝や夜間の時間帯で練習をしていました。
こうした点一つをとっても、公平性が担保されているとは言い難く、それは法律を含む制度面においても意識的な部分を含む文化的・社会的な面においても違いを感じました。研究や教育活動、また立ち上げた団体での活動を通じて、少しでも日本におけるジェンダーや多様性に関する課題に対してスポーツを通じて取り組んでいきたいと考えています。
Jリーグ30周年やW杯開催など、サッカーの話題も多いので、サッカーに携わってきた私なりにその魅力を言えば、「世界共通」だということです。私自身、世界のどこに行っても1人にはなりませんでした。海外では一時的に所属組織がない期間もありましたが、それでもサッカーをしていたからこそ、米国やスウェーデン、ザンビアでも友人に誘われたりしてチームに混ぜてもらうことができた。そうした繋がりや仲間をつくれたサッカーには感謝しています。
平成の時代から続く慢性的な不況に追い打ちをかけたコロナ禍……。 国民全体が「我慢」を強いられ、やり場のない「不安」を抱えてきた。 そうした日々から解放され、感動をもたらす不思議な力が、スポーツにはある。 中でもサッカー界にとって今年は節目の年だ。 30年の歴史を紡いだJリーグ、日本中を熱気に包んだ20年前のW杯日韓大会、 そしていよいよ、カタールで国の威信をかけた戦いが始まる。 ボール一つで、世界のどこでも、誰とでも──。 サッカーを通じて、日本に漂う閉塞感を打開するヒントを探る。