最前線のユーザーが認めた
韓国製兵器の性能
実際に、購買国の最前線ユーザーは韓国製兵器の性能をどのように評価しているのだろうか。今回、K9を導入したフィンランド軍とエストニア軍の調達担当者や実戦部隊長らへのインタビューを通じて、現場の声と導入に至る経緯を聞いた。
まずK9導入の経緯だが、フィンランドは17年に日本の防衛装備庁にあたる韓国防衛事業庁と大韓貿易投資振興公社(KOTRA)との間で、48両の中古のK9の導入に関する契約を結んだ。21年秋には5両の追加契約も結ばれ、製造元のハンファからの補修部品供給なども含まれた。一方、エストニアも18年に中古のK9を12両、フィンランドとの共同購入という形により契約した。エストニアはまた、20年に6両の追加購入契約を締結している。両国ともにハンファからの手厚いサポートを受けている。
さらに両国の共通点は、兵器調達の際、「政治的中立と透明性」が厳格に求められることだ。これは選定過程において友好国の兵器であれば、平等に審査して要求性能と評価試験の結果などに基づいて採用が決まるというものだ。両軍の調達担当者と実戦部隊長は「日本が他国に負けない良い製品を提案してくれれば、当然購入を検討する対象になる」と口を揃える。
フィンランド軍とエストニア軍にとってK9導入の最大の理由となったのは、米国製やドイツ製に比べて構造やシステムがシンプルである点だ。両国には、徴兵制と軍の根幹を成す予備役制度が存在している。フィンランドの徴兵制は6カ月から12カ月間、エストニアは8カ月から11カ月間で、一度徴兵を経験した人間は、除隊後も有事の際に動員される予備役の一員となる。
予備役の将兵は数年に一度呼集されて再び訓練を受ける。その際、予備役に対する教育の観点からも、韓国製は扱いやすいのだ。さらに、K9を運用するフィンランド軍の実戦部隊長は「メンテナンスも容易で、エンジンも含めて、搭乗員らによってある程度の整備も可能だ。自国内の森林地帯や寒冷地での展開を求められるわれわれにとって、故障時にその場で対応できるのは大きなメリットだ」と語った。
また両国ともに冬季は厳寒であり、その中でも他の季節同様のパフォーマンスが求められるが、ここでも韓国のサポートは手厚く、両国のニーズを捉えている。たとえばエストニア軍のK9は独自の通信システム搭載を除いて特段の改修を施さず、韓国仕様の標準装備の車内ヒーターのみで冬季も活動可能である。
約1300㌔メートルにわたる国境でロシアと対峙しているフィンランド軍では、北極圏を含むより高緯度の寒冷地での活動を視野に入れている。そこで、通信システム・射撃管制装置の改修に加え、路面凍結時の横滑り防止装置が搭載されているなど、よりローカライズ(現地化)が行われている。さらにK9用の寒冷地仕様の保管庫建設も行われるなど、韓国はインフラ整備にも力を入れている。