2024年11月28日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年12月7日

 ワシントン・ポスト紙コラムニストのデビッド・イグネイシャスが、11月18日付で、ウクライナを支持する一方で戦争を封じ込めることを意図したバイデン政権のこのところの危機管理を評価する論説‘The U.S. seeks to support Ukraine, but contain the war’を書いている。要旨は次の通り。

Yaraslau Mikheyeu / iStock / Getty Images Plus

 バイデン政権は、ロシアとウクライナの全般的な和平合意は目下のところ可能とは見ていない。このところの努力は危機管理にある。その努力に共通するテーマはウクライナを助ける一方で紛争を封じ込めることである。

 CIA長官ウイリアムズ・バーンズは、11月14日にトルコの首都アンカラでロシア対外情報庁長官セルゲイ・ナルイシキンと会った。NSCの報道官によれば、バーンズはロシアによる核兵器の使用がもたらす結果と戦略的安定に対するエスカレーションのリスクを伝達した。ついで、バーンズはキーウに赴き、11月16日にゼレンスキーと会談した。バーンズはゼレンスキーと、核兵器を使用しないようにとのナルイシキンに対する警告およびウクライナに対する米国の支持のコミットメントを話し合った由だ。

 11月15日にウクライナとの国境近くのポーランド領にミサイルが着弾した件では、バイデン政権は冷静であった。バイデン政権は信頼に足る情報を欠いていることを認識しており、事実の収集を待った。ポーランドも歴史的な敵対国ロシアを直ちに非難する衝動に耐えた。

 米国は、ウクライナの行動のリスクが大き過ぎる、あるいは硬直し過ぎだと思う時には、これを押し返して来た。ロシアの超国家主義者の娘が車の爆破で殺害された事件では、米諜報機関はウクライナに警告した。サリバン安全保障担当補佐官は、ゼレンスキーにプーチンとの交渉は拒否するとの方針を取り下げることを要求する目的もありキーウに赴いた。

 ミリー統合参謀本部議長は、ヘルソンからのロシアの撤退は外交の開始の機会を提供するかも知れないとして、「交渉の機会がある時、平和が達成され得る時、その機会を捉えるべきである」と述べた。

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 この論説はウクライナを助ける一方で戦争を封じ込めることを意図したバイデン政権のこのところの危機管理は機能していると評価している。特に、ポーランドにロシア製のミサイル(対空ミサイルS300)が着弾した一件については、11月15日午前10時前にバリでバイデン大統領が「軌道から見て、ロシアから発射されたものとは考えにくい」といち早く発言したことにより、(若干の国からロシアを非難する先走った発言はあったようであるが)議論は誤った方向に進行する前に鎮静化した。

 上記の論説は、ミリー統合参謀本部議長の発言への対応も危機管理に数えている。危機管理というか、内実は火消しである。彼は11月9日のEconomic Club of New York における講演で、第一次大戦における前線の膠着を引き合いに、冬を前にしてウクライナ軍が戦場で現状以上に領土を奪還することは甚だしく困難であるとして「交渉の機会がある時、平和が達成され得る時、その機会を捉まえるべきである」と述べた。


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