低所得者層からの厚い支持
AMLOは、「第4の変革」として、経済社会面でナショナリズムに基づく国家介入主義を主張しているが、電力供給の国家管理や石油産業の全面的国有化などは、憲法改正が必要で、後2年の任期内での実現は覚束ないので、退任後も影響力と事実上の権力を維持したいのであろう。しかし、その先には、権力維持が目的化した独裁化への道があると懸念される。
INEの改組自体、憲法関連法案なので、3分の2の多数が必要となり、野党は、法案を阻止できるとの見通しもある。AMLOは、11月13日の反対デモに危機感を覚えたこともあり、これに対抗して、28日に就任4周年を記念し、全国の支持者に呼びかけメキシコ市で数万人レベルのAMLO支持の行進を行った。この行進には、有力後継者と目されるシャインバウム・メキシコ市長とエブラール外相も参加し、労働組合や地方政府が地方からの参加のためのバスを大量に用意したとも伝えられ、野党側に批判を招いている。
AMLOは、就任後、前政権が進めていた国際空港の建設計画の取りやめや元大統領を汚職容疑で捜査するかどうか、更には自らの信任投票など、国民の声を聴くとして法律上の根拠のない国民投票を再三行った。野党側がボイコットするため低投票率にも拘らず、提案の支持率は高くなり、これにより国民の支持を得たと主張するなど、法の支配や民主的なガバナンスの観点から疑問とされる行為を繰り返してきた。更に、大統領令により軍を建設事業などさまざまな目的に活用し、また軍人を優遇する一方で、麻薬組織は健在で治安状況はむしろ悪化しており、コロナ対策や経済再生策も十分とは言えない。
これらの数々のネガティブな側面にも関わらず、AMLOの支持率は、いまだに60%近い。これは、種々の給付金配布や最低賃金を毎年引き上げるなどの施策が人口の5割を超える低所得層の心をつかんでいることを示している。
そしてパンデミックにより、就任時より低所得層は、6%以上増加し全人口の6割を超えたとみられている。このような最低賃金引き上げにもかかわらず、依然として人件費は米国よりかなり低く企業活動は堅調なので、国際投資や経済成長に顕著な影響は出ていない。野党勢力は、次回大統領選挙で、民主主義の危機に絞って争点にできるかが課題である。