また、中国の力との均衡を保つために必要な米国の存在をこの地域に維持するために豪州と日本が果たしている役割の重要性を強調している。この認識は広く共有される必要がある。12月6日付のAusminの共同声明にも三国間の防衛協力の重要性への言及がある。
以上の観点からは、豪州が2020年春以来の戦狼外交による貿易上の嫌がらせに耐えたことは歓迎すべきことである。中国の圧迫に豪州が膝を屈する事態になっていたとすれば、周辺のアジア諸国に及ぼした心理的影響は甚だしく好ましくないものであったであろう。
日米との繋がりをバックに中国と対峙
中国も嫌がらせが不発に終わったことを認めざるを得なかったのか、豪州における政権交替を機に緊張の緩和に舵を切った。11月15日、アルバニージー首相は習近平国家主席とバリ島で会談したが、同首相は上述の国内のコンセンサスを背景に強い立場で会談に臨めた様子である。
なお、この会談は30分程度のもので、象徴的な意義を有するにとどまった。関係の正常化に至った訳ではない。貿易上の嫌がらせもそのままである。嫌がらせに耐え得た要因には鉄鉱石、液化天然ガス(LNG)、羊毛といった中国にとって代替の利かない主要な輸出品目を豪州が有していることがあるらしく、二国間の貿易にはそれなりに強靭なところがあり、当面現状のまま推移するように思われる。