側近の一人、エド・ランデル元ペンシルバニア州知事は「共和党議会の幼稚さと大人のバイデン大統領の違いが明白になった。米国民は極端主義にくみしない。民主党は次回選挙を有利に戦える」と語り、民主党幹部議員も「今後の議会審議を見てみよう。〝仕事師〟としてのわが党は得をする一方、内ゲバで重要法案を立ち往生させかねない野党はまずいことになる」などと論評してきた。
また、大統領顧問グループの間でも、少なくとも年明け早々の段階までは、①大統領支持率が上向きに転じ始めた、②物価高騰も落ち着きを見せてきた、③下院議長選出では、トランプ氏の制止を無視した造反が続き、彼の党掌握力の限界が暴露された――などから、潮目が変わったとして、2024年大統領選に向けたバイデン氏の「早期出馬表明」への期待感が高まりつつあったといわれる。
バイデンに浮上した疑惑
ところが、その後、思わぬ〝番狂わせ〟が生じることになった。
去る9日、バイデン氏がかつて副大統領を退任後、ワシントン市内に持っていた事務所に機密文書が残されていたことが発覚、その後、デラウェア州の私邸でも別の機密文書の存在が明らかになり、〝隠匿〟の疑惑が持たれ始めたことだ。
バイデン氏は昨年来、トランプ前大統領がホワイトハウスから大量の機密持ち出しにより、米連邦捜査局(FBI)による強制家宅捜索を受け、刑事事件に発展した際に、「持ち出しは全く無責任なことだ」と批判していただけに、今度は自らも、同様の疑いがかけられることになり、メディアも大きな関心を寄せている。
ホワイトハウス・スポークスマンはこの件について、「たまたま所在が発覚した文書はただちに国立公文書館に返却した」「私邸の強制捜索には至っていない」などとして、トランプ氏のケースとは内容、深刻度において次元の違う問題であることを強調した。
しかし、ガーランド司法長官が特別検察官を任命し真相究明に乗り出したことから、野党共和党が攻守を変え、息を吹き返しつつある。マッカーシー下院議長も記者会見で「バイデン氏の弁護士が、昨年の中間選挙前に文書を発見していたにもかかわらず、公表を遅らせた」として、議会としても独自調査を行う意向を表明した。
もし、バイデン陣営が中間選挙への影響を懸念し政治的配慮から意図的に公表を遅らせていたことが立証されれば、たんなる「騒ぎ」から「事件」に発展する可能性も否定できない。また、今後の事態の推移いかんによっては、バイデン大統領自身の出馬表明のタイミングに影響する可能性もある。
今年は新年早々から本格的な政治の季節を迎え、与野党間の攻防はますます激しさを増すことになりそうだ。