2024年11月21日(木)

#財政危機と闘います

2023年1月24日

東京都によるバラマキは少子化悪化の懸念

 東京都の少子化は全国最悪であり、東京都の合計特殊出生率は1.08と全国平均の1.30を大きく下回っている。一方で東京は結婚や出産適齢期の女性が全国各地から流入している。

 仮に、東京都以外の道府県から東京に転入した女性が、出身地の合計特殊出生率であったとしたら、東京都の合計特殊出生率は実績値の1.08から1.17へ上昇する。つまり、東京都は他の道府県に比べて出生を阻害する要因が多いということになる。

 こうした阻害要因を放置したまま、財政力の強い東京都が少子化対策と称して子育て世帯へのバラマキを強めれば、他の道府県から東京都への子育て世代の流入を促進するだけで、全国の出生率の改善にはつながらないどころか、かえって全国の少子化を加速させる可能性も高い。要は、子供や子育て世帯の奪い合いを生じさせるだけである。こうした事態を防ぐには国が少子化対策の主体となる必要がある。東京都は利己的にならず一国全体の利益を重視すべきであり、かき乱すのは控えるべきだ。

何のための少子化対策なのか

 だからこその「異次元の少子化対策」なのだという声も聞こえてきそうだが、社会保障のスリム化ではなく、増税による少子化対策はかえって少子化を加速させる懸念があることは「「異次元の少子化対策」実現に必要なたった一つのこと」で指摘した通りである。是非、岸田首相には強いリーダーシップを発揮して頂きたい。

 しかし、それ以上に問題なのは、そもそも何のための少子化対策なのか国からも東京都からも明確に発信されていないことにある。つまり、少子化対策の目的が単に、子を持ちたい国民が子を持てるようにするだけが目的であれば、人口減少には歯止めがかからないのだから、「給料が上がっても手取りが上がらない理由」で指摘した通り、若者を痛め付ける社会保障制度の改革なくしては、国の根幹を揺るがす危機的状況は先送りされるだけである。

 あるいは、経済や人口が右肩上がりの時代に構築された社会保障制度を延命させるため、頭数の多い団塊世代や団塊ジュニア世代の老後の面倒を見させるための労働力が必要というのであれば、仮に岸田首相の「異次元の少子化対策」や小池知事の「分厚い少子化対策」が即効果を上げても、その子どもたちが社会や経済を担うのは20年後なのだから、それまでの間、社会や経済を支える労働力をどこかから連れてくるほかない。

 要するに、どちらにしても、現在の年齢に依存した社会保障制度の抜本的な改革は避けて通れないし、社会保障制度の抜本的な改革が政治的に不可能であるのならば、外国から労働力を連れてくる以外道はない。

 国立社会保障・人口問題研究所「将来人口推計」によれば、外国人を毎年50万人受け入れたとしても、出生率の仮定を2.20に置き換えた場合の総人口よりはやや増加する程度で、2065年時点では人口は減少する。人口を増やすには毎年75万人規模の外国人を受け入れる必要がある。

 ただし、この場合、同質的な日本人を前提に組み立てられてきた日本の在り方は大きく変容することは間違いないだろう。もし、こうした大胆な移民政策を実行できるのであれば「異次元の少子化対策」と呼ぶに値するのではないだろうか。

 実際、新型コロナウイルスで外国との往来が途絶する前の20年1月では、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」によれば、19年1月に比べて外国人が増加したのは島根県を除く46都道府県であり、そのうち埼玉県、千葉県、滋賀県、大阪府では外国人の流入により総人口が増加している。しかも、外国人の年齢構成は日本全体のそれよりも若いため、出生率も日本人より高く6.8‰となっている。


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