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#財政危機と闘います

2023年1月24日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

関東学院大学経済学部教授

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。15年4月から中部圏社会経済研究所研究部長を経て、22年4月より現職。

 東京都の小池百合子知事が、18歳以下の子どもに月5000円の一律給付に続き、所得制限を設けずに0~2歳の第2子の保育料一律完全無償化、都内の私立中学校に通う生徒の授業料への年間10万円の助成など、「分厚い」と表現したくなる少子化対策を矢継ぎ早に打ち出している。

(maruco/gettyimages)

 こうした小池知事の少子化対策は、「異次元の少子化対策」を打ち出した岸田文雄首相にも影響を与えることは必至だろう。

効果の出ていない少子化対策

 国も少子化に対しては無策だったわけではない。国の少子化対策は、1990年の1.57ショックを契機として、94年のエンゼルプランを嚆矢(こうし)とし、2003年に少子化対策基本法が制定されてからは4度にわたる「少子化社会対策大綱」の策定、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」、「ニッポン一億総活躍プラン」、「人づくり革命基本構想」、「新子育て安心プラン」、全世代型社会保障制度の確立など、少子化対策が加速している。そして、詳細な内容は今のところ不明ではあるものの、岸田首相は「異次元の少子化対策」の実施を表明している。

 少子化対策基本法を受けて策定される「少子化対策大綱」では、少子化の進行は社会経済の根幹を揺るがす危機的状況を生んでおり、その主な原因は、未婚化・晩婚化、有配偶出生率の低下にあるとしている。そこで、「国民が結婚、妊娠・出産、子育てに希望を見出せるとともに、男女が互いの生き方を尊重しつつ、主体的な選択により、希望する時期に結婚でき、かつ、希望するタイミングで希望する数の子供を持てる社会をつくる」ことで、若い世代の結婚や出産の希望がかなえられたときの出生率である「希望出生率」1.8を実現するとしている。

 しかし、実は、希望出生率自体が低下している。2019年に改訂された「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」によれば、(有配偶者割合(18~34歳女性)32.0%×夫婦の予定子ども数2.01人+独身者割合(18~34歳女性)68.0%×独身者のうち結婚を希望する者の割合(18~34歳女性)89.3%×独身者の希望子ども数(18~34歳女性))2.02人×離死別等の影響0.955で定義される希望出生率は1.79と推計されている。

 この推計式をもとに、厚生労働省『第16回出生動向基本調査』結果により、「夫婦の予定子ども数2.01人」、「独身者のうち結婚を希望する者の割合(18~34歳女性)84.3%」、「独身者の希望子ども数(18~34歳女性)1.79人」をアップデートして再推計を行うと、希望出生率は1.59となった。つまり、政府が一連の少子化対策によって若い世代の結婚や出産の希望をかなえられたとしても実現される出生率は1.59にとどまり、人口置換水準の2.07に遠く及ばず、現状の出生率1.27程度から小幅な改善にとどまる。これまで行われてきた日本人を増やすという少子化対策は効果を上げていない。


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