世界的に有名な自然科学週刊誌である「サイエンス」が信じられない記事を掲載した。「反対を押し切って日本は福島の廃水を太平洋に投棄の予定――放出は海洋や人間の生命にリスクがないと政府は述べているが、一部の科学者は同意していない」と題する論説だ 。その内容はあまりに偏ったものであり、世界の読者に大きな誤解を与えるものだ。そしてその背後には南太平洋地域の歴史問題が潜んでいる。
処理水は危険なのか?
サイエンス誌の論説は次のような内容である。
日本政府は今年の春または夏までに、福島第一原子力発電所から130万トンの放射能汚染水を太平洋に放出する予定である。東京電力は排出される放射性物質の量は少なく、海洋生物や人間へのリスクはないと述べ、海洋放出は国際原子力機関(IAEA)と日本の原子力規制委員会の承認を受けている。
しかし海洋学者は東京電力のデータは不十分と言っている。また低濃度放射能測定専門家は、東京電力は限られた放射性核種しか測定していないので、そのほかに何が入っているか分からないと言い、処理施設の機能についても疑問を投げかけている。
海洋生物学者は、飲料水の基準を下回るトリチウムであっても海水の自然レベルの数千倍であり、トリチウムが海洋生物に蓄積し、魚や人間に影響を及ぼすと述べ、排水中の放射性核種をカキの殻に取り込ませるバイオレメディエーション(生物学的環境修復)という代替案を提示している。
太平洋諸島フォーラム事務総長は、すべての当事者が安全を確認するまで海洋放出をすべきではないと述べ、米国海洋研究所協会も安全を裏付ける科学的データの欠如を理由に反対している。