仲間と食事の動画を撮影していたら、突然ひとりがテロ行為を始めたというのであれば別だが、最初からSNSに「回転寿司テロ」動画として投稿する目的を示し合わせて撮影を始めたのであれば、テロ行為者と動画の撮影者やSNSへの投稿者との間に「共謀」があったと認定される場合がある。
共謀があるとされた場合、撮影者や投稿者も業務妨害罪等の共同正犯や幇助犯にあたるとされる可能性があるし、民事でも共同不法行為としての損害賠償責任が課される可能性がある。
最初からSNSに動画を投稿する目的でテロを行ったのであれば、回転寿司チェーンのブランドイメージを大きく傷付ける行為として、悪質だと見なされても仕方ないだろう。
「拡散」に責任はないのか?
さて、一連の「回転寿司テロ」が大きな話題となったのは、SNSでの拡散によるところが大きい。例えば、誰かがいたずらでレーン上の寿司に唾をつけたとしても、誰も動画を撮影しなかったりSNSに投稿したりしなかったのであれば、たとえ刑事・民事の責任が課されてもここまで大きな話題にはならなかったと思われる。
動画の投稿者の中には、「仲間内だけで楽しむつもりだった」「拡散されるとは思わなかった」などと説明している者もいるようだ。しかし、もともとの投稿を行ったユーザーの意図がどうであれ、公開した以上は「リツイート」などの機能で拡散する可能性がある。リツイートが繰り返される過程で、偶然多数のフォロワーを持つインフルエンサーの目に留まり再度リツイートされ、情報が爆発的に拡散することも少なくない。
このように、企業のイメージダウンを招きかねない投稿がなされた場合、それが大きく拡散されることでダメージは深刻化する。投稿をリツイートすること自体が、損害の拡大に貢献してしまっているという側面は否めないだろう。
動画を拡散したSNSユーザーの大半は義憤に駆られてのことだと思われるが、中には面白半分や、店舗を揶揄したり非難する意図を持つユーザーも少なからずいるだろう。このように企業などのイメージダウンを招きかねない投稿を拡散する行為には、何か問題はないのだろうか。
リツイートも自らの「表現行為」
これまでも、誰かを誹謗中傷する内容の投稿を、ほかの誰かがリツイートなどのSNSに備わった機能で拡散した場合に、リツイートすること自体が名誉毀損などの不法行為にあたるのかということは以前から議論の対象となっていた。
この問題についてはこれまで裁判となった例も多数あり、中には誹謗中傷を含む投稿をコメントすることなく単にリツイートした行為それ自体に名誉毀損が認定された事例もある。
リツイートそれ自体が名誉毀損にあたるかどうかの判断は、もとのツイートの内容、リツイートした時点での前後のツイートの内容、その他の具体的な事情、ユーザーの影響力など、個別具体的な事情によって大きく結論が異なるが、「コメントなくリツイートする行為であってもリツイートしたユーザー自身による表現行為である」というのが、裁判例での概ね共通した認識のようだ。