2022年12月9日(金)

ビジネスと法律と経済成長と

2022年10月13日

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河本秀介 (かわもと・しゅうすけ)

弁護士

敬和綜合法律事務所所属。東京大学卒業後、三菱重工業での勤務経験を経て、2007年に弁護士登録。以後、会社関係訴訟、企業経営への助言、株主総会指導、M&Aアドバイスなど、コーポレート分野を中心に、幅広い内容の業務を遂行している。

 大手回転寿司チェーン「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトの元社長らが営業秘密の不正取得に関する不正競争防止法違反で逮捕されたニュースは衝撃をもって受け止められた。報道によると、元社長は、以前はライバルチェーン「はま寿司」の親会社の取締役に就任していたところ、その立場を利用して原価や仕入れ先などの営業秘密データを不正に取得し、それをもってカッパ社に就職したということだ。

(Urupong/gettyimages)

 事件は現在捜査中だが、仮に報道されているとおりの事実があったとすれば、元社長はライバル企業が努力して培った営業データを一方的に利用し、自社を有利な立場で経営することができる。

 このような行為は、秘密を持ち出された会社に多大な損失を与えるだけでなく、企業間の公正な競争を損なうことにもなる。ライバル企業同士の切磋琢磨が失われると、例えば価格や品質面での企業努力がなされなくなり、結果として消費者にも好ましくない影響が生じる。

 不正競争防止法は、このように、企業等の事業者が市場の健全性を損なうような不正な競争行為に及ぶことを禁止する法律だ。法律は、営業秘密についてどのようなルールを設けているのだろうか。また、営業秘密を管理する企業の役員や従業員は、どのようなことに注意すればよいのだろうか。解説していきたい。

営業秘密の漏えいには大きな制裁が予定されている

 不正競争防止法は、事業者が営業秘密として管理している情報について、窃盗、詐欺、強迫などの不正な手段で取得したり、不正に取得した情報を使用したりすることを禁止している。例えば、企業の役員や従業員が、営業秘密として社内で管理されている情報に不正にアクセスしてダウンロードしたり、ダウンロードした情報をライバル企業に流出させたりすることだ。

 また、正当に取得した営業秘密であっても、不正な利益を得たり、情報の保有者に損害を与える目的で使用する場合も、同法に違反する。例えば、他社から秘密保持契約のもとで提供された営業秘密を、ライバル企業に利益を与える目的で流出させるような行為である。

 さらに、情報の提供を受けたライバル企業側も、不正に取得された営業秘密情報であることを知りながら取得したり、取得した情報を使用するような場合も不正競争防止法違反にあたる。不正な手段で取得された情報であることを後から知った場合であっても、それと知りながら使い続けるような場合も同様だ。

 営業秘密の不正取得や不正使用が不正競争防止法の違反行為にあたると判断される場合、民事上の損害賠償責任の対象となるだけでなく、刑事責任が課される可能性がある。その損害賠償請求は個人に向けられることもある。社会的信用だけでなく、大きな経済的損失を生むことも起きてしまう。

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