2024年5月9日(木)

WEDGE REPORT

2023年3月2日

 著名な人権・民主化運動家として知られるチェスのグランドマスターのガルリ・カスパロフ氏と政治犯罪者として英国に亡命中のロシアの大富豪ミハイル・ホドルコフスキー氏が連名で2023年1月のフォーリン・アフェアーズ誌で論じている方向性だ(「Don’t Fear Putin’s Demise-Victory for Ukraine, Democracy for Russia-」Garry Kasparov and Mikhail Khodorkovsky、January 20, 2023)。

 両氏は2023年2月「ミュンヘン安保会議」に出席して、ロシア民主化論を展開し、「プーチン政権が弱体化するとソ連崩壊の時と同じく、地方の知事がモスクワの命令を拒否する」と述べ、民主化はそのようにして始まる、必ずしも大規模な流血の惨事を伴うわけでもないことを示唆した(「Khodorkovsky warns West of war with China if Russia wins in Ukraine」Catherine Belton、February 15, 2023)。

 ロシアが全域で民主化するとユーラシアでは全く新しい国際環境が出現する。アジア太平洋の安全保障にも大きな前向きな展開が起きる。そしてロシアは日本を含む西側社会との協調の下で持続成長を実現できる。

民主化に失敗したらロシアは中国の属国となる

 しかし重要な点はこの高名な二人のロシア人が「ロシアの民主化が失敗したらロシアは中国の属国になる」と警告していることだ。ロシアが民主化に失敗したら中国の属国になる。それでよいのか?

 ロシアは何世紀にもわたり常に専制と独裁に支配されてきた。多くの場合、ロシア人は残虐な支配を耐えて生きて来た。今度はこの国が歴史上始めて、アジアの専制大国に支配される。それは地政学上の重大問題だ。それにロシア人の度重なる不運を不憫に思わざるを得ない。

 ロシアが混乱し、ユーラシア全体が不安定化すると中国が勢力を拡大する可能性はある。西側諸国は協調してユーラシア全体の地政学をマネージしていく必要がある。

 
 『Wedge』2022年6月号で「プーチンによる戦争に世界は決して屈しない」を特集しております。
 ロシアのウクライナ侵攻は長期戦の様相を呈し始め、ロシア軍による市民の虐殺も明らかになった。日本を含めた世界はロシアとの対峙を覚悟し、経済制裁をいっそう強めつつある。もはや「戦前」には戻れない。安全保障、エネルギー、経済……不可逆の変化と向き合わねばならない。これ以上、戦火を広げないために、世界は、そして日本は何をすべきなのか。
 特集はWedge Online Premiumにてご購入することができます。

   
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。


新着記事

»もっと見る