2024年12月22日(日)

Wedge OPINION

2023年1月28日

 周知の通り、ロシアの民主化に向けて既に運動が始まっている。政治犯として服役中のアレクセイ・ナワリヌイ氏はワシントンポスト紙に投稿し、「ロシアは議会制民主主義を実現し、今までの権威主義を止め、問題を生むのではなく、問題を解決する良き隣人になるべきだ」と論じた(「Alexei Navalny: This is what a post-Putin Russia should look like」September 30, 2022)。

ロシアの民主化を求める声がロシア国民からも出てきている(AP/アフロ)

 今回、世界的な人権活動家として知られるチェスの元世界チャンピオンであるガルリ・カスパロフ氏と政治犯罪者として英国に亡命中のロシアの大富豪ミハイル・ホドコルスキー氏が連名で2023年1月のフォーリン・アフェアーズ誌で論じた議論(「Don’t Fear Putin’s Demise Victory for Ukraine, Democracy for Russia」By Garry Kasparov and Mikhail Khodorkovsky, January 20, 2023)は注目に値する。

2023年ロシアは民主化する?

 彼らはプーチン政権の全体主義を拒否する「ロシア行動委員会」の名の下でおよそ次のように論じている。ウクライナ戦争でプーチン政権はいずれ近いうちに崩壊する、プーチン以降のロシアは議会制連邦共和国に移行する――。

 ウクライナは国際的に認められた1991年当時の領土を回復し、プーチンの侵略によって生じた損害を正当に補償され、すべての戦争犯罪者に責任を取らせると論じている。そしてロシアを「ならず者独裁国家」から議会制連邦共和国に変身させるとしている。

 彼らは更に、「米国はプーチン支配の終焉は核武装したロシアが混乱に陥ることになり、中国が強大化すると恐れているが、それは間違いだ。プーチン支配の継続こそ、その危険が増大する。むしろウクライナの勝利とロシアの民主化こそが世界中で民主主義の大義を後押しすることになるのだ」と議論を展開している。

 この二人の議論の重要な論点は1991年の国境線は国際的に認められたものだとして、その維持を前提としているところだ。そして、プーチン大統領の「失われたロシア帝国の再建」の試みは失敗する運命にあり、民主主義への移行と地方への権力委譲の機は熟している。従って何よりも大統領がウクライナで軍事的に敗北することが必要だと論じている。

 この論考は、「法の支配、連邦制、議会制、明確な三権分立を目指し、抽象的な『国益』よりも人権と自由を優先する」という原則のもとに、ロシア国家の再生を目指す青写真を描きだしている。 「私たちのビジョンは、ロシアが議会制共和国であり、中央政府には外交・防衛と国民の権利の保護に必要な権限だけを残し、それ以外の統治権限は地方政府に移管する。ロシアはそういう連邦国家となる」と論じている。

 更に、プーチン政権が崩壊して2年以内に、ロシアは小選挙区制を採用し、新しい憲法を採択し、新しい地方機関のシステムを決定する。しかし、短期的にはその前に、立法権を持つ暫定的な国家評議会が必要であり、それが臨時のテクノクラート政府を監督する必要がある。その核となるのは、法の支配にコミットするロシア人だとし、ロシア新政府はプーチン派を排除し、迅速に行動し、西側諸国と協力して経済の安定化を図るとしている。


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