貸与型奨学金の依存度が高い中間層
奨学金改革によって、低所得者層の進学チャンスが広がった。割を食ったのは中間層である。改革前後の学校納付金負担方法を比べると、低所得層と中間層の格差を鮮明に読み取ることができる(図表2)。
新制度の導入によって、低所得層における「給付・減免」の比率は大きく変化した。13 年は350 万円以下では8.1%、400万~450 万円世帯とも5.5%であったものが、20 年度では388 万円以下世帯は33.9%、400万~500 万円世帯も17.8%まで増加している。
貸与奨学金の利用状況も変化した。給付型支援が限定的であった13 年では、貸与型奨学金の比率は、世帯収入が低くなるほど増加し、350万円以下世帯で22%と最も高い。20 年では388 万円以下世帯の貸与奨学金の比率は12%まで低下する。かつては貸与型奨学金を利用せざるを得なかった層が、新制度に移行したことを意味する。
一方、20 年度の貸与奨学金への依存率は、400万~500 万円、513万~688 万円世帯の方が388 万円以下よりもむしろ大きく、値そのものも13 年からあまり変化してない。給付型支援の対象外となる中間層は、預貯金の取り崩しや貸与奨学金に頼らざるを得ないことを意味している(小林雅之・濱中義隆「修学支援新制度の効果検証」『桜美林大学研究紀要』2021,p.57-58.)。
学生本人が学費の負担をしなければならないのは低所得層だけではない。長期下落傾向にある給与所得、非正規雇用者の増加、高齢化に伴う社会保障費の負担増など、中間層においても、親世代の学費負担能力は確実に落ちている。
給付型奨学金はぎりぎりもらえない、親からの経済的援助は期待できない。2人に1人が奨学金を利用する時代、中間層が割を食う状態になっている。
誰が教育費を負担するのか
誰が教育費を負担するのか。日本では、親が子の進学費用を負担するという常識がある。
進学にかかる費用を「親が負担するのが当然だ」と考える保護者は、「強くそう思う」が18.9%、「そう思う」が58.5%、8割近くの保護者が親負担すべきと考えている(文部科学省「2021年度『高校生の進路に関する保護者調査』基礎集計表」)。
しかし、国際的に見れば、日本の考えが常識という訳ではない。国際比較するには、財務省が作成した資料がわかりすい(図表3)。
日本や韓国は、親が学費を負担する割合が高かった。政府は給付型奨学金や大学への運営交付金などを通じて、学生本人は貸付奨学金やアルバイト収入によって足りない部分を埋めてきた。