主要な国家利益として、国境を確保すること、米軍の即応体制の危機に対処すること、中国共産党の経済的・文化的・軍事的な力を抑制することなどを国家利益に数えているので、優先順位においてウクライナ戦争はこれらの挑戦に劣るということらしい。
デサンティスは、ウクライナ戦争を「領土紛争」と規定していることを含め、ウクライナ戦争の国際秩序に対する脅威の重大性に対する認識が危険なまでに欠落している。
「ウクライナにおける米国の目的は何か?」という質問には、「平和」だと回答しているが、無条件に「平和」を語ることはプーチンに報償を与えることになりかねない。彼は、米軍の展開を必要とし、あるいはウクライナが国境を超えて作戦を行うことを可能にするような援助はすべきではなく、F-16戦闘機や長距離ミサイルは供与されるべきでない、とも述べている。
ウクライナに対する支援の限界を問われたのに対しては、バイデン政権による「白紙手形」の財政支出は最も差し迫った挑戦への対応を阻害するとの趣旨を述べている。
デサンティスは不意打ちの質問に答えたのではない。書面での回答であるので、考えた上での回答であるはずである。それだけに、彼に米国外交を任せ得るのかの疑問を抱かせる。
トランプに支持率でリードされるデサンティス
最近の米クイニピアック大学の世論調査によれば、共和党の指名争いではトランプがデサンティスを46%対32%でリードしている。論説も指摘する通り、トランプの支持層を丸ごと取り込もうとする戦略ではうまくいかないであろう。
デサンティスは過去にはロシアに強く当たることを主張したことがある。例えば、2014年のロシアによるクリミア奪取以降、当時下院議員だった彼はオバマのプーチンに対する弱腰を批判し、ウクライナに「防御的および攻撃的」兵器を供与することを主張したことがある。トランプには、「彼は俺の言っていることを真似ている。これは手のひら返し(flip-flop)だ」と揶揄される始末である。
デサンティスは勉強が必要であろう。その上で、外交政策について包括的に考えを表明する機会を持つべきであろう。