2024年の大統領選で共和党においてトランプ前大統領のライバルになり得るデサンティス・フロリダ州知事のウクライナ戦争についての発言が物議を醸している。米ワシントンポスト紙コラムニストのヘンリー・オルセンは、3月16日付の論説‘Ron DeSantis’s stance on Ukraine is a serious political blunder’で、「ウクライナ戦争でウクライナを支援してロシアに対抗することは米国の国家利益ではない」とするデサンティスの立場は政治的失策である、と論じている。要旨は次の通り。
デサンティスがウクライナ戦争を「領土紛争」だと切り捨てたことは、顕著な政治的失策である。
ウクライナへの軍事援助に対するトランプ派のMAGA(「米国を再び偉大に」の頭文字)共和党員の支持は最近落ち込んでいる。デサンティスがウクライナを声高に支援することに距離を置く選択をしたのは、そのためだ。
しかし、これは共和党内における政治的ダイナミクスを見逃している。デサンティスがトランプに勝って共和党の指名を獲得するチャンスは、MAGA有権者の多く(必ずしも全てではない)をトランプから引きはがすべく誘い、かつ彼らを大多数の非MAGAの共和党員に合体させることにかかっている。デサンティスのステートメントは後者のグループから自身を遠ざけ、第三の候補者がつけ入る隙を与えたことになる。
現に、ニッキー・ヘイリー前国連大使とマイク・ペンス前副大統領は、デサンティスとは見解を強く異にし、ウクライナを支持することは米国の利益であるとの信念を再び述べた。MAGA共和党員は反対するだろうが、世論調査では約40%の共和党員がウクライナ支持に賛成である。
米国の安全保障は敵対国を封じ込め得る同盟のネットワークにかかっている。欧州の北大西洋条約機構(NATO)諸国はそのネットワークの主要な一部であるが、彼らにとってウクライナをロシアが征服することは自身の存立に係わる脅威である。「ウクライナを守ることは主要な利益でない」と言うことは、米欧関係を核心から揺さぶるであろう。デサンティスにとっての優先事項である中国とのグローバルな競争に勝つためにも欧州との緊密な同盟は必須である。
デサンティスのステートメントは、ロシアとウクライナの戦闘それ自体への巨大な誤解を示している。戦闘を「領土紛争」と規定することによって、戦争はウクライナのロシア語圏がウクライナの一部にとどまるべきか否かを巡るものだと彼は示唆しているようである。
しかし、それはロシアがウクライナに侵攻した理由ではない。プーチンは、ウクライナの「真の主権はロシアとのパートナーシップにおいてのみ可能」だと主張した。それゆえ、彼は2014年にはウクライナに侵攻してクリミアを奪取し、2022年に再び行動を起こしたのである。
デサンティスはこのことを理解していないように見える。彼はプーチンの明白な意図に無知であるか、彼の意図を脅威とは見ていないか、どちらかである。どちらにせよ、米国の対外政策を主導する彼の能力の評価を高めることにはならない。
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この論説が主題としているデサンティスのステートメントなるものは、保守系メディアの米フォックス・ニュースの扇動的ホストとして知られるタッカー・カールソンが、大統領選挙の共和党の候補および潜在的候補に送り付けたウクライナ戦争に関する質問状に対するデサンティスの回答である。回答は3月14日の放送でカールソンにより紹介され、ちょっとしたニュースとなった。
「ウクライナでロシアに対抗することは米国の主要な国家利益か?」という質問に対してデサンティスは、ウクライナとロシアの「領土紛争」に更に巻き込まれることは、そのような利益に当たらない、と述べている。