捜査一課のなかで「風間道場」と呼ばれる組織は、優秀な刑事を育てることを目的として、新人刑事が風間とペアを組んで殺人事件の捜査に当たる。ここで、♯1♯2で風間の相棒になった、瓜原潤史(赤楚衛二)の例を観ながら考えてみよう。
「自分で考えろ」
「教場」は警察学校の厳しい訓練の場である。そして、「風間道場」。教官は後輩を徹底してしごいて、そのなかで若手が成長する物語が観る者の心をつかむのだろうか?
それはちょっとずれていると考える。風間は配属されてくる新人刑事について履歴や性格、過去の事件捜査などについて、着任前から知っている。瓜原潤史(赤楚)の場合は、警察学校の卒業作文集も読んでいる。「人に優しい警察官になりたい」と瓜原は記していた。
「転属願いを書いて、交番勤務に戻れ」というのは風間の口癖のようなものだ。
そして、新人が犯人を追い詰める方法を相談しても「自分で考えろ」である。
現場に同行した新人に「目を閉じろ。見たものをいってみろ」。目で見たものは情報量が多すぎて間違った方向に流れることがある、という信条からである。
「(犯人について考えるのはいいが)被害者の視点でも考えろ」
「教場」シリーズは、倒叙ミステリーである。つまり、犯人の犯行が描かれる。それを新人刑事と風間が解いていくのである。「刑事コロンボ」を想起していただければご理解願えるだろう。
♯2ブロンズの墓穴(4月17日)に至って、新人の瓜原が捜査を担当したのは、小学校の女性教諭の殺人事件だった。校門近くの読書する人ら3人が集合したブロンズ像の前で死体が発見された。♯1で瓜原は風間から転属願いすなわち交番勤務に戻るように言い渡されていた。
容疑者は簡単に浮かび上がった。小学生の娘が殺された教諭のクラスでいじめにあっていると訴えていたのに、教諭は無視していたのだった。その母親は溶接工だった。
瓜原にもいじめられた経験があった。母親の内科医は、彼をフリースクールに入れた。
風間に対して、彼は「自分にもいじめられた経験があります。しかし、そのために母親が教師を殺すなんて考えられません」と。
「それで?」と尋ねる風間に対して、瓜原は「母はなにもしないで僕をフリースクールに2年間も通わせたんです。そのほうが母にとっても楽だったんでしょう」。