2024年5月3日(金)

教養としての中東情勢

2023年5月29日

奇手を使って権力に固執も

 エルドアン氏は大統領として3期目に入ることになるが、基本的に3選を禁じている憲法の規定などから今回の立候補には疑義が出ていた。エルドアン氏は14年に首相から鞍替えして大統領に初当選。しかし、クーデター未遂事件後に議院内閣制から実権型大統領制に憲法を改正した上で、18年の選挙で再選された。

 本来の規定では、3選になることから今回の選挙には出馬できないが、エルドアン氏側は実権型大統領制に憲法を改正したため、18年選挙が1期目になると主張、選挙管理委員会もこれを認めたいきさつがある。改正憲法では、2期目の大統領の任期後半で議会の5分の3の賛成でもう1期延長できるとされており、エルドアン氏は最大33年まで大統領として留まることが可能だ。

 しかも米有力紙によると、33年以降も傀儡の大統領を置いて、自らは副大統領として〝君臨〟する手や、実権型大統領制をやめて再び議院内閣制に戻して首相に就任するという奇手もある。この手本はプーチン大統領だ。2000年に大統領に当選したプーチン氏はやはり3選を禁じた憲法があったため、08年の選挙には出馬できなかった。

 その代わり、当時第一副首相だったメドベージェフ氏に大統領を譲り、自らは首相に転じ、4年間待った。プーチン氏は12年に大統領に復活当選し、いまや36年まで大統領に留まることが可能だ。

 「エルドアン氏もプーチンをモデルに権力に固執しようとするのではないか」(同)という声が早くも聞こえてくるが、イスラエルと並んで中東に2つしかない民主国家としては情けない話ではないか。

   
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