2024年7月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年7月13日

 実は、この地域でネットワーク構築を進めた原動力は日本と言って良い。初期は日米韓、そして日米豪、日米印の連携である。これをクアッド(日米豪印)に持って行った。更に、今回は、日米韓比を実現した。

 これらのネットワーク構築にはそれぞれ理由がある。米国の同盟国との間のネットワークについては、「ハブ・アンド・スポークス」という伝統的枠組みは、安全保障環境の深刻化と米国の相対的優位の低下により十分ではなくなった。その中で日米豪を立ち上げ、米豪同盟、日米同盟に加え、それまで欠けていた日豪間の安全保障協力を構築すれば同盟網にとりプラスとなるのは明白だった。

 同様のことは日米比にも言えるが、それに加え、万一不幸にして台湾有事が発生した場合、地理的位置から言って、日本とフィリピンの両方が米国にとって活動のハブとなるという事情がある。兵員・装備の事前集積や非戦闘員退避、更には実際の戦闘作戦において、日米比の連携は不可欠だ。

 日米韓についても同様の背景がある。更に、日韓関係が緊張しがちな中で、両国の同盟相手である米国の力を借り、最低限の協力関係を維持するという目的もある。また、韓国が北朝鮮問題に関心を集中する中、対中抑止を含む地域的課題にも韓国が責任を有することを指摘し、関心の幅を広げる場としても重要な役割を果たす。

インド・インドネシアへの働きかけを

 一方、インドは非同盟の大国であるが、同国が重要懸案でできるだけこちら側に近い立ち位置をとるよう働きかけていくためには、各種協力のネットワークが有効だ。それが日米印であり、その後の日米豪印4カ国の枠組み「Quad(クアッド)」である。

 東南アジアにおいては、インドネシアの重要性を忘れてはならない。中国のやり過ぎでインドネシアが安全保障上の懸念を深める現在、何らかのネットワークを構想すべきだ。例えば、近年毎年のように海警に守られた中国漁船が来襲するインドネシアのナツナ諸島に対して、日米インドネシアで開発の下支えをすることが考えられる。日本は既に魚市場開発を進めており、米国も空港開発に関心を持っている。

 また、中国への懸念を共有し近年接近を強めるインドとインドネシア双方と関与していく枠組みを考えるのも一案だろう。この両国は国際社会で多数派を形成する際のキャスティングボードを握りうる力のある国だ。既に豪州は豪印インドネシアの対話の枠組みを立ち上げている。これに日本が参加する可能性も含め、具体化を進めるべきだと思う。

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