2024年7月14日(日)

世界の記述

2023年4月15日

 ジプニーは、第二次大戦後にフィリピン駐留米軍から払い下げられたジープを改造して作られたのが始まりのフィリピン独特の乗合バスだ。車体に施された派手な飾りやペインティングがユニークで、フィリピンの名物となっている公共交通機関だが、今、消滅の危機に直面している。

マニラ首都圏には、派手な車体のジプニーが、安価な庶民の足としてたくさん走っている(篠田有史撮影、以下同)

政府が進める〝新車両〟への転換

 フィリピン政府は、古いディーゼルエンジンが吐く排気ガスが大気汚染の原因となっているうえ、屋根が低く窓はガラス無しで乗降口が車体後部にある構造の安全性に問題があるとして、現状のジプニー車両を廃車にし、外国メーカー中心のミニバス車両の導入を義務付けようとしている。マニラ首都圏などの大手運輸業者は2018年から、政府による補助金(コストの約6〜13%)と政府系銀行からの貸付を受けて日野モータースフィリピンが製造するミニバスを購入するなど、転換を進めている。地元紙では、「より安全に運転できるし、環境にも優しく、長期的にみれば皆に利がある」との声も紹介されている。

 ただ一方で、全国に20万台以上あるというジプニーオーナーの8割近くを占める個人事業者の中には、反対する人も多い。その大きな理由は、政府が導入を推める車両が高額であることだ。

 政府が購入を促してきた日本や韓国、中国企業のミニバスは、1台250万ペソ(約620万円)以上で、現在の車両価格の3倍を超える。ドライバーのセリーロ・ラトレーノさん(58歳)は「車を借りて運転している私などは、1日12時間走って3200〜3600ペソ稼ぎ、800ペソほど軽油代に、あと800ペソを車両オーナーに払えば、残るのは1500ペソ前後。9人家族が食べていくだけで精一杯だ。ミニバス購入のローンなんて考えられるわけがない」とため息をつく。

 ローンを返済するためには、ジプニーの初乗り料金を現在(12ペソ=約30円)の倍以上に上げる必要があり、貧しい庶民の足としての役割が果たせなくなってしまうという。自身も低所得者であることが多いジプニードライバーにとって、受け入れ難いことだ。

 政府は補助金やローンを協同組合や会社組織に対して提供しているが、ジプニードライバーの多くは個人事業者で、営業許可証を個人で取得して働いている。補助金を得るために法人組織をつくる場合は個人の許可証は返納しなければならず、万が一、組織が潰れたら、生活が立ち行かなくなってしまうことも懸念される。


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