プレクーリングが大きな鍵
「カナリア」があれば、熱中症予防ができるのかというとそうは行かない。安全に部活動ができる施作が必要だ。ところで、熱中症が発生した時の対応法を知っているだろうか?
①日陰などの、涼しいところに移動。
②横たわらせ、ベルトなど体を締め付けるものを外す。
③首筋、脇の下、腿の付け根などを、水、氷で冷やす。
首筋、脇の下、腿の付け根に共通しているのは、太い血管が体表近くを通っていること。この部位を冷やすということは、体温を一定にするために、余分な熱を移動させる役割を持つ血液を一気に冷やすことができるということだ。倒れるほど体が危機的状態になった時はこれでいいのだが、もちろん冷やし過ぎは厳禁。
逆にいうと血液温度を体に問題がないレベルで冷やすプレクーリングができると、運動で深部体温が上がる分を緩和することができる。つまり、ハードな環境下でも、熱中症になりにくくすることができる。
では、体に問題がないレベルで、血液を冷やすのはどうするのがいいのだろうか? それは手のひらを使うのだ。
手のひら、足の裏、頬にはAVA(Arteriovenous Anastomoses:動静脈吻合)と呼ばれる血管がある。動脈の末梢は毛細血管になり、そしてまたそれがどんどん合わさっていき、静脈を形成するのだが、AVAというのは毛細血管になる前の動脈と静脈を繋ぐ血管。極めて特殊な血管だ。毛細血管ほどではないが、1平方センチに100から600本もある。役目は「体温調整」。拡張したり、収縮したり血液量を制御することにより、体温調整する。収縮時の血流量は0。拡張時の径は毛細血管の約10倍。血流量は毛細血管の1万倍だそうだ。
つまり手のひらを冷やすと、ちょうどいい塩梅に深部体温を下げることができるのだ。
シャープの適温蓄冷材
シャープは液晶テレビの雄。その根底にあるのは「液晶」技術であり、テレビ技術ではない。実はシャープは、素材系にかなり強いメーカーでもある。が、素材は、いわゆる約束の地が見つかるまでは量が出ないので大変である。液晶テレビを当てる前のシャープを思い出していただければ分かってもらえると思う。
今回、シャープが用意したのは、解凍温度を自在に操れる保冷剤。シャープでは「適温蓄冷材」と呼ばれている。
私はこの素材に、2017年に出会っている。良質の日本酒、ワインなどは、温度により味、香りが変わるので、温度を調整できる保冷剤は有用と考えたわけだ。だが、反応はイマイチ。その後、いろいろな酒の品評会にも参加したが、シャープの保冷剤の名前をきくことはなかった。また温度が細かく設定できるので、ワクチン輸送時にはとても便利なはずなのに、そこでも名は出てこなかった。
そして2023年。突然、熱中症予防で、その名前に再会した。
今回の設定温度は「10℃」。保冷剤の設定温度は、保冷剤が作り込める最低温度を示す。氷が溶けている間、0℃をキープするのと同様、こちらの保冷剤が解凍している間、10℃をキープできる。
配布されたサンプルを、私も握ってみた。触った直後は氷を握った感じ。温度に十分差があるので、差は分からない様だ。しかし2分もすると差が出てくる。冷たさに慣れてくる。氷ではこうならない。常に冷たい。そして時々痛くなる。ならないとは思うが、凍傷になるのではないか、とも思うほどだ。それが全くない。また、0℃保冷剤を持ったときは、手が濡れてくる。露結するためだ。それもない。湿っぽくはあるが、あまり濡れない。また、それなりに冷たいながら、手に馴染むように柔らかくなる。サンプルを配布された時、20分握るのは長過ぎると思ったが、これなら持っていられそうだ。