2024年5月5日(日)

Wedge REPORT

2023年8月13日

毎日当たり前のように食べている卵。だが、実際どのような行程を経て食卓に届いているのか知っている人は少ないだろう。鶏卵業界の実態を探る。「Wedge」2023年8月号に掲載されている「価格高騰、鳥インフル……『卵』に何が起きているのか?」記事の内容を一部、限定公開いたします。

 卵が高い、まだまだ高い。

 6月27日現在の価格を近所のスーパーで確認してきたが、JA全農たまごの「しんたまご」が10個入りで435円。いわゆるレギュラー卵も10個入りで298円である。

 この高騰、昨年10月に始まった高病原性鳥インフルエンザの流行が原因との見方が強い。日本の採卵鶏約1億4000万羽のうち、実に1600万羽を殺処分したというから、需給が逼迫するのは当然と言えば当然のことである。しかし、全農が発表している卵の相場を仔細に見ていくと、奇妙な現象に突き当たるのだ。

(MARTIN POOLE/GETTYIMAGES)

 例年、卵の相場は生卵の消費が減少する夏場に下がり、クリスマスケーキ用の需要が増える12月に向けて上がっていく。しかし、昨年の相場はすでに8月の段階から上昇し始めているのだ。この変調は、原因が鳥インフル「だけではない」ことを示唆している。

 養鶏産業に詳しい東京農業大学の信岡誠治元教授が言う。

「原因はエサ価格の高騰だ。エサの50%を占めるトウモロコシの輸入価格は、3年前の2020年にはキロ当たり23円だったが、23年4月には47円。2倍に上昇している。ロシアによるウクライナ侵攻の前からトウモロコシは値上がりを続けていた」

 原因は何か?

「中国だ。中国で畜産が盛んになり、20年からトウモロコシを大々的に輸入するようになり、同年には2951万トンを輸入した。日本はトウモロコシを1548万トン(20年)輸入しており、世界でもトップクラスの輸入国だったが、あっという間に追い越された」

 専ら穀物から栄養を得ていた人々が動物性たんぱくを食べるようになった結果、世界的な穀物の争奪戦が起きている。それこそ今回の卵価高騰の真因であると、業界関係者は口を揃える。トウモロコシの値上がりに耐え切れなくなった養鶏家が廃業に追い込まれ供給が減少していた最中に、鳥インフルが追い打ちをかけたという構図だ。

餌代の上昇は
企業努力で吸収してきた

 それにしても不思議なのは、はるか20年も前から餌代の上昇が続いていたにもかかわらず、昨年の前半まで卵価が安定していたという事実だ。トウモロコシ値上がりの影響は、いったいどこへ消えてしまったのか?

(続きは下記リンク先より)

全文は『Wedge』2023年8月号に掲載されております。雑誌はアマゾン楽天ブックスでもご購入いただくことができます。試し読みはこちら

   
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Wedge 2023年8月号より
日本の少子化対策
日本の少子化対策

結婚・出産を望まないのは、若者・子育て世代のワガママであり、自分たちが選んでいること―。こう思う人がいるかもしれない。だが、経済情勢から雇用環境、価値観に至るまで、彼らを取り巻く「すべて」が、かつての時代と異なっている。少子化を反転させるため、岸田政権は異次元の少子化対策として経済支援の拡充を掲げるが、金額だけ次元の異なる政策を行っていても、少子化問題の解決にはつながらないだろう。もっと手前の段階でやるべきことがある。それは、若者や子育て世代の「本音」に耳を傾けることだ。


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