2024年6月22日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年9月5日

日本の漁業を守るため、直ちに行動を

 中国の理不尽な対応でもっとも直接的な影響を受けているのは、実質的な禁輸措置のせいで在庫を抱えた日本の水産関連業界である。さらに今後は日本の農産物や製品などへの不買運動や中長期的なイメージ悪化、さらには訪日旅行客の減少などが連鎖することで、一定の経済的影響は避けられないであろう。

 今回、わが国に反省すべき点があるとすれば、上記リスクは政策側で予測可能なものであったにもかかわらず、不作為によって事業従事者に深刻な影響を与えてしまったことである。それというのも、この10年ほどの日本政府は、農水産物の対外輸出促進を国策として展開するにあたり、成果目標の短絡的な達成のため、来るべき地政学的緊張とそのリスクという現実を真剣に考慮せず、手近と思われた香港を含む中国市場に過度な傾斜を強めてしまった。その結果として、今回のように相手方に弱点を突かれてしまったのである。

 このように考えれば、従来からの風評被害に加えて、今回の中国側の理不尽な対応によって深刻な打撃を受けている国内の水産関連業界には、すでに実施に向け動いている短期的措置だけでなく、国内での流通・消費の一層の拡大、付加価値の向上、新たな輸出市場開拓に向けた、中長期での着実な支援も必要となる。同時にそのためには、広く国民間で問題意識を共有することが必要である。海に囲まれたわが国の将来の漁業を守るためにも、迅速に行動しなければならない。

「チャイナ・リスク」を直視・考究する機会に

 現在、日中間の基礎的な信頼関係は、もはや崩れているといっても過言ではない。かつての「日中友好」の幻想に基づいた時代はとうに過ぎ去り、いまやわれわれの眼前には厳しい地政学的な現実がある。

 こうしたなかで、政治から経済にいたるまでの中国との関係がもはや深刻なリスク要因となったことは、今日においては当然ながら織り込まれていなければならない。そして今回のような問題は、「嵐が過ぎるのを待てばよい」という一過性のものではなく、今後も度々繰り返されることが避けられないであろう。

 処理水の海洋放出をめぐって、中国側によって引き起こされた理不尽な諸問題は、私たち日本人の目前にあらためて「チャイナ・リスク」という、避けては通れない課題を突きつけ、否が応でも正面から直視させる機会となった。これを改めて考究することで、日本全体としての、今後の中国とのあるべき向き合いかたが見えるのではなかろうか。

※本文内容は筆者の私見に基づくものであり、所属組織の見解を示すものではありません。

   
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