日本が多少でも折れれば、中国の不当な主張を認めたことになり、悪宣伝にも利用される。将来の日本外交にとっても大きなマイナスだろう。
各国協力で、中国を孤立させろ
中国側の抗議活動が長期にわたるかどうかについては、さまざまな見方があるが、「強硬な世論があるので政府もそれに合わせた対応を取らざるを得ない」(宮本雄二元駐中国大使、9月3日のNHK『日曜討論』)という予測もある。そうだとすれば直ちに収束する可能性は少ない。
岸田首相は9月6日、ジャカルタで中国の李強首相に対して水産物禁輸の禁輸撤廃を要求したが、先方は「責任ある方法で処置すべきだ」と硬い態度を崩さなかった。
しかし、世界の大勢をみると、利は日本にある。強硬だった韓国も、尹錫悦政権登場以来、日本の主張受け入れに転換、中国の立場は弱まりつつある。日本がすべきことは、科学的なデータを世界に発信して理解させ、中国をいっそう孤立に追い込むことだろう。
米国のエマニュエル駐日大使が7月31日、福島県相馬市を訪問、ヒラメの刺身などに舌鼓を打ち、「このあたりの水は中国の4原発が処理せずに放出している水より安全だ」と述べ、「嫌がらせ」「偽情報の流布」などと中国を非難した。日本にとってありがたい援軍であり、各国の協力を求めることは極めて有効だろう。
特使派遣に前のめりになる必要はなかろう。早期の解決は期待できないことも覚悟し、浮足立つことなくあくまで原則を貫き対話の糸口を探るべきだろう。その場合、国内の水産事業者対策に万全を期すべきことは言うまでもない。
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