港区といえば、日本人の間でも屈指の高級住宅地として知られている。どこに行くにもアクセスがよいのに加え、閑静で、各国の大使館やインターナショナルスクール、高級スーパーなどもあり、イメージもよい。何より資産価値が高い物件が多いことから人気が急上昇しているそうだ。
続いて富裕層に人気があるのは江東区、中央区などの湾岸エリアだ。これらの地区のボリュームゾーンは1億~5億円。筆者も以前、『中国人が日本を買う理由』(日経プレミアシリーズ)の中で、江東区豊洲のタワーマンションを約7000万円で購入した20代の男性の話を書いたことがあるが、高級タワーマンションが多く、海が見える眺望でも価格帯は1億円前後からあり、彼らから見ると「コスパがいい」と感じるようだ。
中国人富裕層は着実に増えているのか
中国では窓から海が見えるマンションは数が少なく、日本ならではの「東京タワー」「海」「富士山」が見えるマンションの人気が高い。超富裕層には港区、富裕層には江東区や中央区が人気で、それ以外の層のニーズは個人の事情によってさまざまだ。従来から日本に住んでいる在日中国人が多い地区を選ぶ人もいる。
法務省在留外国人統計(22年12月末時点)によると、東京23区で最も在留中国人が多いのは江東区で、続いて新宿区、足立区、江戸川区、板橋区の順だったが、東京都の今年1月の統計によると、2018年からの5年間の伸び率では、港区や中央区が高かった。これは中国人富裕層らが、これらの地区の不動産を購入したことによって押し上げられている可能性もあると考えられる。
同社の顧客層は主に30~50代を中心として、20代もいるという。出身地は北京市、上海市、深圳市、杭州市などの沿岸部の大都市のほか、内陸部の四川省成都市、重慶市などもある。職業は会社経営者、会社員などが多いが、莫大な財産を築いて、現在は仕事に就いていない人もいるという。
投資から「自ら住む」へ
富裕層の不動産購入で、コロナ禍前との違いはあるのだろうか。
「以前は投資として日本の物件を買っている人が多かったです。20~25平方メートルのワンルームなどをオンラインで見て複数買っていました。しかし、コロナ禍以降、自分用(自宅)として物件を購入する方が増えてきているのが顕著な傾向です。
自分用の場合はオンラインではなく、実際に来日し、自分の目で見て確かめてから買うという特徴がありますね。また、最近はマンションやビルをまるごと購入、つまり『一棟買い』をする富裕層も増えています。一棟買いの方が資産価値が高く、効率もいいからです。円安の傾向もありますので、一棟買いしても、かなりお得感があるのだと思います」(趙氏)