カラスを駆逐したハヤブサ、オオタカ
都心からハシブトガラスを駆逐したもう一つの要因は、ハヤブサやオオタカの都市進出だった。
もともと山地の岩場や海岸の崖にいたハヤブサは、2000年頃から高層ビル群でも営巣するようになった。山地・低山の林に生息していたオオタカも同時期に都市の緑地樹木に適応し繁殖を開始した。
ドバト、キジバト、カラスなど、餌の豊富な都市は、大型猛禽類にとって進出に値する場所だったのだ。
「小型猛禽類のチョウゲンボウやツミは、大型のハヤブサ、オオタカより早く進出しました。そして各地からの報告によると、この4種の猛禽類は今や確実に都市で増えています。フクロウやアオバズクといった夜行性の猛禽類も進出を始めたので、これから勢力圏がどうなるかわかりませんが、人間のすぐ近くで、人間社会と深く関わりながら、人間が考えてもみなかった野鳥の生態系が形成されつつある、そのことは知っておいた方がいいと思います」
現在、NPO法人自然観察大学で学長を務めている唐沢さんは、そう言った。
「消えた都市鳥に、モズやホオジロ、ヒバリなどがいますね。なぜ消えたんでしょうか?」
「それらは3種とも、とても警戒心が強く、神経質なんですね。そして農村型です。水田や畑が広がる人家周辺だからこそ暮らすことができた。しかし、最近の都市にはもうそういった場所が残っていません。遠く離れた田園地帯に移動する他なかったんでしょう」
80歳を迎えた唐沢さんに今後の予定を尋ねると、少し考えて、「北海道から沖縄まで、野鳥を観察しながら列島縦断をしてみたい」とのこと。野鳥の世界は、何とも奥深いのである。