2024年11月22日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2023年9月23日

大型猛禽類と暮らすスズメ

 次いで、スズメである。地味な色彩、地味なさえずり。日本国内に一年中生息する留鳥だが、穀物を食う害鳥と見なされてきたため、人間とはつかず離れずの距離を保ってきた。

「スズメで驚いたのはその基本的な生態です。少数で人家周辺に生息する定着相と、集団で郊外に生息する群生相があり、双方を出たり入ったりしつつ相互補完的に暮らしている?」

「長期に観察すると、そうなります。日本では、都市郊外の河川敷に生息する群生相と町中の定着相がワンセットになっていますね」

 意外なのは、スズメが天敵を避けるため、サシバやハチクマ、オオタカなど大型猛禽類の巣の中に、好んで営巣していることだ。

「サシバはカエルやトカゲ、ハチクマは蜂を食べています。オオタカはキジバト、カラスなどを襲うけれど、スズメのような小さな鳥は食べない。スズメはそのことを知っていて、彼らを用心棒に利用しているんですね。したたかな生存戦略です」

生態系の頂点にいるカラス

 長い間、日本の都市の生態系の頂点に君臨していたのが、人間を除けばカラスだった。

 大型で雑食のカラスは何でも食べる。ツバメ、スズメ、ヒヨドリ、ドバトらの成鳥はもちろん、卵や幼鳥、その死骸も食べる。あらゆる種類の生ゴミも食べる。

「でも居なくなると大変ですよ。ネズミやヘビの死骸や害虫を片付けてくれるスカベンジャー(自然界の分解者)ですからね。居なくなると、人間社会が困ってしまいます」

 日本のカラスは大別すると、熱帯林がルーツのハシブトガラスと、北方草原がルーツのハシボソガラスになる。皇居や明治神宮など都心の森林やビル街に生息したのは主にハシブトだ。それが近年、急速に様変わりしてきた。

 唐沢さんたちの調査によると、都心のハシブトガラスは、1985年の6737羽が2000年の1万8658羽へと急増し、その後2021年に2785羽へと急減したのだ。増減の主な原因は、生ゴミと猛禽類だった。

 2000年前後は、東京の銀座で生ゴミをあさるカラスが社会問題になっていたが、その後の分別収集やリサイクルの普及で生ゴミが減少。コロナ禍での外食自粛やテイクアウト増もあり、カラスの餌の生ゴミはさらに激減した。

「バブル経済の象徴だった都心のハシブトが減ったせいで、周辺のハシブト・ハシボソ混在地域のハシボソが最近は都心に移り始めています」


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