2021年度に行政によって殺処分された犬猫の数は全国で1万4457頭。内訳は、犬が2739頭、猫が1万1718頭となっている。決して少ない数ではないが、遡ること17年前、04年度には犬猫合計で39万4799頭が殺されていたことと比べれば27分の1以下に減っている。犬猫を守る活動が大きな成果をあげてきたことの証しだ。
13年、全国の自治体に先駆けて犬の殺処分ゼロを達成したのが川崎市動物愛護センターである。筆者はその3年前の夏、小学生だった長女の自由研究に付き添い、同センターを訪れた。それは衝撃的な体験だった。
1974年竣工の古びた建物内は廊下にも室内にもびっしりとケージが並び、犬猫が飼育されていた。当時の川崎市の条例では「収容したことを公示した後2日間経過しても飼い主が現れない動物は処分(譲渡または殺処分)すべき」とされていたが、同センターは譲渡先を探しながら長期間飼育していたのである。
いわば掟破りの満員飼育。それでも1つ1つのケージには、収容されている犬猫の性格や当日の体調を記した手書きのメモが貼られており、新しい飼い主への譲渡を目指し、しつけや散歩も行われていた。実はそれまで「動物愛護センターとは名ばかりで、収容した犬猫を殺処分するための施設」というイメージを持っていたのだが、思い込みは一気に吹っ飛んだ。
「僕は動物を助けたくて獣医師になりました。殺処分するのは本当につらい」
あの日、真剣なまなざしで訴えていた職員の想いは、センター全員に共有されていたのだろう。2013年以降も17年(1匹殺処分)を除き、殺処分ゼロは継続されている。ただ今回、13年ぶりに訪れた同センターの金子亜裕美所長は言う。
「当センターは、『殺処分ゼロにします』とは宣言してはいません。無理が生じる可能性がありますので。努力した結果として、ゼロになればいいなとは思います」