2024年5月19日(日)

ペット医療事情最前線~日本社会の有り様を問う

2023年10月4日

 環境省の統計は殺処分の理由を次の3種類に分類している。
① 譲渡することが適切ではない(治癒の見込みがない病気や攻撃性がある等)
② ①以外の処分(譲渡先の確保や適切な飼養管理が困難)
③ 引取り後の死亡

 川崎市の殺処分数は①と③の両方を入れた数字(譲渡先の確保と適切な飼養管理は問題なくできているため②の理由による処分は行っていない)だが、自治体によっては①による殺処分しか報告しないところもあるようだ。それだと極端な話、衰弱や病気を放置して死なせてしまったとしても、殺処分したことにはならない。各自治体が発表する「殺処分ゼロ」を評価する際には、①以外の数字がカウントされているかどうかにも着目すべきだろう。

ミルクボランティアの貢献

 全国に先駆け、犬の殺処分ゼロを達成できた同センターだが、猫についてはいまだできていない。

 「当センターでは保護対象を『放置したら死しんでしまう』場合に限定しているので、どうしても助けられる率は低くなってしまいます。(死亡してしまうケースで)多いのは交通事故ですね。近年は、野良猫に不妊手術を施して、元いた場所に戻して繁殖を抑制するTNR活動が普及したお陰で減ってきていますが、まだまだ多い」(金子氏)

 動物が交通事故で命を落とすことを「ロードキル」という。岐阜市にあるNPO法人「人と動物の共生センター」が22年に公表した調査結果によると、全国で1年間に交通事故で命を落とす猫は約29万匹と推定され、殺処分数の10倍に相当する。

 そのほとんどがノラ猫だ。猫の殺処分をゼロにするには、社会を上げた取り組みが必要不可欠なのである。

 ただ、死亡を含む殺処分数は犬猫ともに減少している。その理由としては、自治体が犬と猫の引き取りを拒否できるようになった13年9月の改正動物愛護管理法施行の影響が大きいが、川崎市の場合、なんと言っても大きかったのは、法改正の数年前から進んでいたボランティア団体、とりわけ「ミルクボランティア(子猫飼養管理支援ボランティア)」との連携だ。

 ノラ猫や迷い猫として施設に引き取られる数は保護猫全体の72%、うち幼齢猫(赤ちゃん)が59%を占めている。21年度に殺処分された猫は1万1718頭に上るが、赤ちゃん猫はそのうちの63%(環境省調べ)にあたる。

 最高に可愛い時期の子猫が譲渡されずに殺処分されてしまうのは意外かもしれない。だが離乳前の子猫の世話は、昼夜問わず数時間ごとの哺乳や排泄ケアを必要とするなど大変な上に、ちょっと目を離している間に死んでしまう不安も常にある。そのため、川崎のセンターでも、以前は保護次第殺処分に回すのが普通だった。

 しかし、この難しい期間を、ミルクボランティアが自宅で預かり、譲渡できる状態まで育ててくれるようになったお陰で、子猫の生命を守れるようになった。

 「ボランティアさんは猫を家族として愛情いっぱいに育ててくれるので、みんな甘ったれの可愛い子になって戻ってきます。ありがたいですね」(金子氏)

 愛されて育った猫は、譲渡会でも引き取り手が見つかりやすいという。


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